タイのコングロマリット:BTSグループ/後編

2020.06.23
  • 経営トピックス
  • タイ

本編は前編の続きです。
タイのコングロマリット:BTSグループ/前編はこちらから。

 

 

メディア事業

主要な収入源


  • メディア事業の収入は、過去数年間順調に増加を続け、2018年度には全てのセクターで優れた業績をあげ、その結果過去最高の51億バーツに達した。屋外メディアは今もなお主要な収入源であり、メディア事業の75%を占めている。
  • 事業は近年拡大し、現在事業内容は主に(1) 屋外メディア、(2) デジタルサービス、(3)物流、の3つに分類される。

(1) 屋外メディア (75%):

大量輸送システム:    継続的に増加。主にBTSスカイトレインの路線延伸、デジタルメディアの占有率上昇、マーチャンダイジングレンタルスペースの増加による
アウトドア:    飛躍的に成長。国内でのM&AやASEAN市場全域を対象としたグローバルな事業展開による
オフィス・その他:    稼働率の向上とオフィスビルの受注契約件数の増加によって収入が増加した

(2) デジタルサービス (25%):デジタルサービスは、グループ会社の統合とラビットグループの成長によって大きく伸びた。

(3) 物流: ケリーエクスプレスへの投資は、広範な物流ネットワークによる競争力の強化とメディア事業の拡大をもたらすだろう。

注:物流事業の収入はほとんどが持分法で処理されているため、物流事業からの収入は営業収入には含まれない

 

 

屋外メディア


  • VGIは、交通機関、看板、街路備品、建物、空港など、あらゆる形式の屋外広告に対応する。このような屋外メディアを使用した広告は、大量輸送システム路線の延伸、建物供給の増加、新規ライセンス契約や外部とのコラボレーションによるビルボードや街路備品の広告事業の拡大により、引き続き大きく成長するものと見込まれる。
  • また、ASEAN域内の主要市場(マレーシア、インドネシア、ベトナム)に加えて同域内のその他の市場でのプレゼンス強化にも注力している。

 

 

デジタルサービスおよび物流事業への多角化


  • VGIは、2017年にタイ最大のマイクロペイメント(少額決済)サービスプロバイダーであるラビットグループを買収した。タイの電子マネー市場は、スマートフォン、インターネット、画期的な決済手段の急増により、過去数年間にわたって進化し、高い成長を遂げており、これがVGIの広告事業に利益をもたらした。ラビットグループのデータ分析を活用することで、効果測定が可能で、ターゲットを絞った広告が提供できるためである。
  • 2018年には、BTSグループがケリーエクスプレスタイの株式23%取得に成功し、タイの物流市場でのビジネスチャンスを捉えて、決済ビジネスを強化した。 インターネット普及率が高いタイ の EC(電子商取引) 市場はASEAN地域でも最大級の規模を誇っており、EC の台頭によって物流市場も大きく成長している。

 

 

不動産事業

  • BTSグループは、 Tanayong Co.、Ltd.という社名だった1968年から不動産開発事業を行っている。グループの不動産ポートフォリオは、土地、低層住宅、マンション、オフィスビル、アパートメント、ホテルなど多岐にわたる。バンコクのスカイトレインシステム運営の長期コンセッション契約を獲得して以降、不動産開発事業のグループに対する重要度はそれほど高くなくなった。
  • 2014年以降は、合弁事業や株式の取得を通じて、さらに積極的に不動産開発事業を行っている。

2014年: 住宅プロジェクト開発会社 Sansiri Pcl.(SIRI)と戦略的アライアンスフレームワーク契約(独占契約)を締結し、業務提携を開始した。以降大量輸送ルート         沿いに、マンションプロジェクト開発のための合弁会社を複数設立
2015年: Natural Park Pcl. (NPARK)の一部株式を取得し社名をU City Pcl.に変更した。不動産事業の主体となる Unicorn Enterprise Co.、Ltdを設立

  • 2018年に、BTSグループは当時子会社だったUnicorn Enterprise Co.、Ltd.の全事業をU City Pcl.に譲渡し、現在は関連会社であるU City Pcl.を通じて主に不動産事業を行っている。
  • BTSグループが現在直接行っている不動産事業は、用地購入に限定されている。タナシティゴルフ&スポーツクラブと一部の住宅用不動産もBTSグループに帰属し、引き続きBTSグループの不動産事業に貢献している(U Cityは、タナシティゴルフ&スポーツクラブの運営のみを行う)。従ってBTSグループの不動産事業関連の収入源は、主にU City Pclからの持株比率に応じた純損益、タナシティゴルフ&スポーツクラブの収入である。

 

 

U City PCL.の事業内容


  • Unicorn Enterprise Co.、Ltd.の全事業譲渡の完了後、U CityはBTSグループの唯一の不動産事業部門になった。
  • U Cityの不動産ポートフォリオは、定期的な収入をあげる不動産と住宅不動産で構成されている。
  • 定期的な収入をあげる不動産は、主に国内外のホテルとオフィスである。中でもとりわけ、ホスピタリティ(接客サービスに関わる)物件からの定期的な収入が大きい。一方、海外でのホテルの買収も、これまで収入の拡大に貢献している。
  • BTSグループは、Sansiriとの複数の合弁会社を50%保有していることで収入を得ている。合弁各社による住宅用不動産の売却益については、持分法を適用して純損益を処理している。
  • U City Pcl.は今後の開発のために多くの土地在庫を保有している。2019年末現在、ナコンラチャシマー(747.2 ライ)、バンコクとその周辺(121.3 ライ)、チョンブリ(2 ライ)を含む3か所の主要エリアで合計870.5 ライを所有している。バンコクとその周辺の土地は、計画中または現在運行中の路線に隣接している(1ライ=1,600㎡)。 

 

 

定期的な収入をあげている不動産
  • U Cityという社名では2015年に事業を開始した。当初はタイ国内のみで事業を行っていたが、2017年からは欧州、中東、アジア地域の17か国に進出し、2019年末までにはさらにグローバルに展開している。 

2017年: ウィーンハウスの資産を買収。内訳は欧州の複数国内の26のホテル(総客室数:4,500)および英国内の2つのオフィスビル
2019年: アルコナブランドとしてドイツとスイスの19のホテル(総客室数:2,043)を買収

  • 主なブランドには、Uホテルズ&リゾーツ、イースティンレジデンシズアンドイースティングランドホテル、ウィーンハウス、トラベロッジホテルズなどがある。
  • 2019年末現在、同社は所有、リース、管理など様々な形態で78のホテル(総客室数1万1,749室)と4つのオフィスビル(英国2、タイ2)の運営を行っている。 
  • 2024年までの5年間でさらに49のホテル(総客室数2万2,000超)の買収が計画されていることから、U Cityのホテル事業は今後も継続的にグループの収入拡大に貢献することが予想される。

 

 

住宅物件
  • U Cityは2014年に、駅に近接したマンションプロジェクトの開発を目的にSansiri Pcl.と合弁契約を締結した。
  • Sansiri との合弁ブランドにはThe Line、The Monument、Khun by Yoo、The Baseなどがある。
  • 2019年末現在、Sansiriとの合弁事業で合計 27件のプロジェクトを進めており、そのうち譲渡が完了しているものが5件、現在譲渡中が6件、残りは建設中または開発を待っているところである
  • Sansiri Pcl.との合弁契約は、運行中および今後運行予定の大量輸送路線に沿って1,000億バーツ相当のマンションを開発することを目標に結ばれた。 

 

 

新規事業への多角化


  • U Cityは、シナジーが期待でき、専門知識を有する大手企業と直接・間接のパートナーシップを積極的に築くことを主な戦略として掲げている。U Cityの開発中のプロジェクトには、香港大手の教育サービス提供会社との合弁会社による複合用途施設「Unicorn」やインターナショナルスクール「Verso」などが含まれている。

 

 

サービス事業

  • BTSグループのサービ事業は、同グループ各社に対して戦略的なサポートを行うものである。建設サービス、ソフトウェア・システム開発、食品・飲料事業などの様々な会社で構成されている。主な事業には次のものがある。

HHT Construction:香港を拠点とする基礎工事会社のLi Kay EngineeringとBTSグループとの合弁事業。HHTは建設および建設管理事業を行っている。2018年度のHHTの収入は9億1,060万バーツ。主な収入源は、U Cityの下で行う複合用途施設「The Unicorn」とインターナショナルスクール「Verso」の建設サービス

Bangkok Payment Solutions:    運輸当局向けの高度な自動料金徴収システム大手のVIX TechnologyとBTSグループとの合弁事業。タイおよびASEAN域内で電子決済サービスを提供する。2018年度の収入源はEDC(電子データキャプチャ)マシンの販売およびソフトウェア開発サービス

Rabbit Rewards:    BTSグループのラビットグループ会社の1つ。BTS、ラビットカード、ラビットラインペイ、ケリーエクスプレスのユーザーに有益なサービスやロイヤルティプログラムを提供している 

Turtle 23:    食品・飲料事業への投資および外食・その他関連事業を含む他の食品・飲料会社への有価証券投資を目的に2018年に設立された

Man Food Holdings Co., Ltd.:    大手鴨肉加工会社であるBangkok Ranch Plc.とBTSグループ との合弁会社。高級中華レストランチェーンの「Chef Man」を運営。以前Chef Manのレストランはその子会社が運営していた。2017年にBTSグループがBangkok Ranch Plc. と合弁会社を設立した際、国内外での事業拡大を目的にChef Man Groupの子会社は新しい合弁会社に売却された

 

 

まとめ

  • BTSグループは過去数年にわたって、4つの部門全ての事業拡大で大いに成果を上げ、政府プロジェクトの入札、M&A、戦略的提携により様々な戦略を駆使している。また、海外展開も近年のBTSグループの重要な動きの1つとして注目されている。
  • BTSグループは今後も新規大量輸送路線の受注に力を入れるとしており、それは他部門の事業機会にもつながるものである。新規の路線が受注できれば、メディア事業の広告スペースが拡大でき、自社が運営する鉄道システムの利用者の数や客層が増えることでさらに多くの顧客行動データが得られる。さらに路線に沿って、不動産やその他インフラプロジェクトの開発が進められる。
  • 投資リスクの分散を目的に国内外の企業との提携に極めて前向きかつ積極的なコングロマリットとして知られるBTSグループは、今後もネットワークとビジネスの強化を進めるとみられる。BTSグループは、タイ市場に加えASEAN市場でのプレゼンス強化にも注力しており、2022年3月期のASEAN市場からの収入見通しを約318億バーツとしている。

 

 

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

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