中国医療用ロボット業界の見通し

2019.03.10
  • 業界トピックス
  • 中国(Greater China)

医療ロボット業界概況

▮医療ロボットの世界市場動向

  • 全世界における医療ロボットの市場規模は年率2桁で拡大しており、国際ロボット連盟(IFR)によると、医療ロボットの市場規模は2018年以降、年率15%程度で成長し、2021年に207億米ドルに達成すると見込まれる。
  • 2014年時点で、地域別に医療ロボットの売上高を見ると、北米と欧州が72%のシェアを占めている。一方、日本と中国のシェアはそれぞれ10%と5%と存在感が低い。
     

▮中国の医療ロボット市場規模

  • 中国の医療ロボット業界は先進国に比べて遅れていたが、2014年から中国政府の政策支援によりCAGR10%で成長してきた。2018年の市場規模は1億ドル以上に達すると予想される。
  • 中国主要28社の医療ロボットの生産種別割合から見ると、現在リハビリとアシストロボットを生産している会社がそれぞれ35.7%と28.6%を占めており、手術支援と医療周辺サービスロボットの比率が低い。
     

▮日本の医療ロボット市場規模

  • 日本の医療ロボットは主に医療用と福祉・介護用の2つの分野に分けられ、そのうち医療用は手術支援と調剤支援、福祉・介護用は自立支援と介護・介助支援ロボットに分類されている。
  • 日本の現在の医療ロボットの市場規模は3億ドル前後であるが、NEDOの2010年発表の「2035年に向けたロボット産業の将来市場予測」によると、2030年の日本医療ロボットの市場規模は49.9億ドルに達すると見込まれる。
     

▮医療ロボットの分類と代表例

  • 医療用ロボットとは、医療サービスの提供、あるいは医療現場で用いられるサービスロボットである。
  • 中国において医療ロボットは、手術支援ロボット、リハビリロボット、アシストロボットと医療周辺サービスロボットの4つに分けられる。
  • 市場の拡大とともに手術支援ロボットの競争も激化してきているが、日本は煩雑な審査やリスク回避意識によってアメリカに遅れを取っている。
     

手術ロボット代表例 アメリカ産da Vinci(ダヴィンチ)

  • ダ・ヴィンチとは、アメリカのIntuitive Surgical社により開発された腹腔手術を支援する、内視鏡下手術支援ロボットである。アメリカでは前立腺全摘手術の約8割にダ・ヴィンチが使われている。
  • ダ・ヴィンチの利点は医師が数ヵ所の小さな切開部から、繊細で複雑な低侵襲手術を実施することができる点である。術後の回復が早まることで患者の入院日数を減らし、患者のQOLを向上させ、病院の病床回転率を上げる。
  • 2016年9月末時点で米国2,501台、欧州644台、アジア476台、全世界で3,803台が導入されている。 
  • 中国は天津大、南開大、天津医科大の共同プロジェクトとして、ダ・ヴィンチと瓜二つの「妙手A」という手術ロボットを開発し、2010年7月天津市科学技術委員会が承認した。
     

医療ロボットの市場環境

▮中国の社会環境

  • 中国国家統計局の統計データによると、2016年時点での60歳以上の人口比率は16.7%となっており、65歳以上の人口比率は10.8%となった。2016年に発表された「2016年中国高齢者金融発展報告」によると、中国の65歳以上の高齢者は2030年に総人口の20.2%にあたる2億8000万人となり、2055年には高齢者の割合はピークに達し、総人口の27.2%にあたる4億人に達する見通しである。
  • 中国の2014年時点の千人当たり医師数と看護師数はそれぞれ1.7人と2.2人で、看護師の人数は世界主要先進国を下回る。2014年時点の千人当たりの全診療科医師数は、一級都市の北京と上海でそれぞれ3.82人、2.85人となっている。高齢化による患者の増加や少子化(2015年の人口調査による総合出産率はわずか1.18%)による人材不足、医療財源の増加が問題になっており、その解決策として医療ロボットに期待が寄せられている。
     

▮医療ロボットのサプライチェーン分析

  • 医療ロボット業界の川上はロボット用部品メーカーであり、川中はロボット本体、川下は手術、リハビリ、介護や搬送用の多様化応用分野である。
  • そのうち、川上のサーボモーター、コントローラーとレジューサー(管継手)の3つのコア部品は依然として輸入に依存しており、国産品の大規模な使用はまだ時間を要する。2014年末までに、中国国内で医療ロボット本体を生産する会社は100社を超えているものの、製品の差別化は図られていない。
     

▮中国国内の動向

  • 近年中国政府から医療ロボットに対する政策支援が続々と打ち出され、特に2013年以後から毎年新設ロボット企業数は顕著に増加してきた。
  • 今後、中国社会における高齢者人口の増加と少子化は進展し、高齢化、医療改革の方向を見据え医療ロボットの市場はさらに拡大していくことが予想される。 
  • 中国国内では医療ロボットを取り扱う企業数は、政府の持続的な政策支援により、増加する見込みである
  • 中国の医療ロボット関連企業は、北京、広州、上海など経済が発達しており、人材と技術レベルが高い地域に分布している。

▮中国の医療ロボットの導入状況と諸外国との技術現状対比

  • 中国の主要都市を中心に病院での医療ロボットの導入が進んでいる。
  • 中国の医療ロボットの全体的な技術水準は米国や日本、欧州と格差がある。
     

今後の見通し

▮日系企業のビジネスチャンス

  • 中国の人口ボーナスが消滅し、労働人口が減少する中、高齢化による介護師不足と生活習慣病患者の増加が重大な社会問題となっている。また、脳血管障害や脳梗塞などを理由に就業が困難となっている労働人口が年々増加していることから、介護・介助と自立支援型ロボットに対するニーズが更に増加するだろう。
  • 中国政府は近年、医療ロボットに対する政策支援を続々と打ち出しているが、中国現地企業は基幹部品のコア技術が不足しているため、ローエンドやミドルレンジの製品がメインである。こうした中、介護と自立支援型ロボットに強みを持つ日系メーカーにとって、ハイエンド製品分野にビジネスチャンスがあると考えられる。
  • グローバル市場をみると、中国の手術支援ロボットの分野において、これまでは「ダ・ヴィンチ(手術ロボット)」を開発したアメリカのIntuitive Surgical社のプレゼンスが高かった。しかし、今後は特許の期限が徐々に切れるため、手術ロボット分野でアメリカに遅れを取っている日本企業には絶好な進出チャンスとなるだろう。

 

 

 

執筆:上海現地法人 山田商務諮詢(上海)有限公司

         (山田コンサルティンググループ株式会社 中国現地法人)

 

 

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