タイ進出時に最低限知っておくべき
法務上のトピック

2019.05.08
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タイ進出を検討するにあたり、必ず知っておいて頂きたい法務トピックをまとめました。
外国人が就労する場合の許可条件、進出可能な外資・進出不可の外資についての規制、タイ政府による外資優遇制度とタイ進出の検討ステップ、タイへの進出形態、株式会社の機関設計とその特徴についてまとめました。
 

タイで事業展開をするうえで最低限抑えるべきマクロ情報並びに文化的・歴史的背景については、前章にて記載しました。ここでは、実務に必要なポイントを記載します。タイに限らず海外で事業展開を進める場合は、まずは法務上の規制を確認することが重要です。よって、まずは法務上のトピックを記載し、その後、事業運営に必要不可欠な要素である、「マーケットの特徴」・「現地パートナーの重要性」・「オペレーション上のポイント」等について記載します。

 

外資規制

新たにタイで事業展開する際に一番に確認するべきは、「外資規制」についての検討です。駐在員個人についてはビザ・ワークパーミットの要件の確認が重要です。日本人が摘発されている事例も存在します。外資規制上のトラブルは、それ単独では収まらず、その他のトラブルに連動していくケースが多くなっています。

法人としても「この業種は外資規制が適用される業種か」、あるいは、「業法上の特殊な要件が存在する業種か」等の検討が必要不可欠です。法律上適法であるかどうかの観点も重要ではありますが、コンサルタントとしてもっとも重視する視点は、「それらの外資規制を踏まえて、どういったビジネスモデルを構築するか」です。典型的な外資規制業種であるサービス業は、一般的に50%超の資本をタイ人/ タイ法人が出資する必要があります。

ただ、それを前提に、『どういったタイ側パートナーと組めば事業が持続的に成長できるか』という検討が必要です。100%の株式保有にこだわるがあまり、本当に必要なビジネスモデルを歪め、結果として赤字になっている事例も存在します。外資規制の理解を前提に、「ビジネスモデルの構築」に注力することが重要です。
 

(1)    外国人の就労
就労ビザ(Non-Immigrant B Visa) とは

はじめに、「ビザ」とは入国審査に必要な書類の一部(査証)のことを指し、本来、外国人がタイに入国する際には必ず必要とされるものです。ただし日本人は30日以内の観光目的に限り、タイ入国・滞在にあたりビザが免除されています。その他の目的(就労や就労者への帯同、留学、長期観光など)の場合には、ビザをタイ国外にて取得した上で、タイの空港で入国審査を受けることになります。

就労ビザ (Non-Immigrant B Visa) とは、タイに就労目的(=労働許可証を取得する目的) で入国・滞在する際に必要とされるビザを指します。日本では東京・大阪・名古屋にあるタイ大使館・領事館にて申請することができ、タイ入国後の滞在可能期間は90日間ですが、リエントリーパーミットを取得せずに出国すると、この滞在期間内であってもビザが失効します。また、滞在期間内に労働許可証を取得しなければならないため、予め労働許可証の取得条件を整えてから、タイに入国します。

タイの就労ビザはいわゆる「入場券」で、タイ入国後に1度出国すると有効期間内であっても失効します。失効させずに出国するための措置として、リエントリーパーミット(再入国許可)という手続きがあります。リエントリーパーミットは、シングル(1度の再入国のみ可)とマルチプル(何回でも再入国可)の2種類があり、それぞれ手数料が異なります。リエントリーパーミットはビザに紐付けて取得するもので、その有効期限はビザの期限と同じになります。そのため、ビザが更新される度にリエントリーパーミットも都度更新が必要です。
 

 

労働許可証 (WP = Work Permit) とは
労働許可証とは文字通り、タイで労働をするための許可証です。就労ビザは「労働許可証を取得する目的で入国・滞在」を許可する証であり、タイでの労働そのものを許可するものではありません。従って、タイで労働するには就労ビザとは別に必ず労働許可証を取得する必要があります。

労働許可証の取得後は就労ビザの滞在期間が切れる前に、就労ビザの更新手続きを行います。更新手続きを行うと、最初に1ヶ月間の審査期間用ビザが発行され、無事審査に通過すると11ヶ月間のビザが発行されます。以降は毎年この更新手続きを繰り返します。

※BOI認可法人、IEAT(タイ国営の工業団地)入居法人、駐在員事務所、また一部条件を満たした内資会社では1ヶ月間の審査期間が免除され、最初から1年間~のビザが発行されます。

タイではタイ国民の就労機会を保護するために、外国人の就労ビザの更新に対して幾つかの条件を課しています。就労ビザの更新申請者の所属する法人がいわゆる内資会社(タイ側株主が過半数以上の会社)の場合、外国人1名あたり「タイ人従業員4名の雇用」 及び「払込済み資本金200万バーツ以上」 であること等が必要です。そのためタイへ進出する外国企業は、派遣する駐在員の人数も考慮して資本金額及び従業員の雇用計画を検討する必要があります。
※BOI認可法人やIEAT(タイ国営の工業団地)入居法人、駐在員事務所の場合は一部条件が免除・緩和されます。

※BOI認可法人の場合、バンコク、チェンマイ、プーケットのビザ・労働許可書センターで恩典を行使している外国人は、2018年7月31日以降SW(Single Window)システムを使用したデジタル労働許可証に変更になりました。
 

そもそもどのような活動が就労に当たるのか、という問い合わせに対し、タイ政府は以下の見解を公表しています。

就労に該当しない活動
(就労ビザ・労働許可証取得不要のケース)

・会議、セミナーの単なる参加者の立場で入国する
・視察、商談担当者として参加するだけの立場で入国する
・特別、学術講演・学会の聴講者の立場で入国する
・技術研修、セミナーにおける講義の聴講者の立場で入国する
・展覧会、展示会の見学者の立場で入国する
・展示会における商品、製品の購買者の立場で入国する
・自社の取締役会に出席するために入国する
* 会議・セミナーへ「主催者」または「請負者」の立場で参加する場合
* 会議、研修、ワークショップ、セミナーへ「意見の表明」、
「講義」、「発表」する立場で参加する場合
* 芸術・文化活動を行う場合
* スポーツ競技会へ参加する場合
* その他、労働省により定められた業務を行う場合
* ビジネスの立ち上げ、投資活動を行う者または
 “高度な知識・能力・スキル(別途詳細が規定される予定)”を有す
 者で、労働省が定めるタイの発展に貢献する業務を行う場合
* 外国人事業法のもとで認可を受けた事業の外国人代表者
※*マークは2018年3月24日に施行された「外国人就労管理に関する
勅令(B.E.2561)」で新たに労働許可証の取得が免除された項目

上記以外の目的で入国し、タイにおける就労に該当する活動をする場合には、原則としては、例え一日であっても労働許可証が必要ということになります。

ただし、タイにおける就労期間が15日以内の場合は「緊急業務届」(WP10)を申請することで、労働許可証の取得が免除されます。ビザの種類は問われず、日本人の場合はビザが無くても申請可能です。「緊急業務届」は労働省雇用局(バンコク)および、各県雇用局事
務所の他、ワンストップサービスセンターでも取り扱っています。


不法就労の罰則
外国人を不法に就労させていた場合、雇用者・労働者双方に罰則規定が設けられています。報酬の有無は問われず、どのような活動に従事していたかを基に判断されます(ボランティア、インターン等も対象)。罰則は罰金もしくは禁固刑、もしくはその両方を課せられ、悪質だと判断された場合は強制送還されるケースもあります。

相次ぐ外国人による爆弾テロや暫定軍政権下における不正撲滅に向けた取り組みもあり、ビザ・労働許可関連の審査・取り締まりは厳格な運用がされるようになっています。 

従業員の内部告発による調査、または不法就労している外国人に対する脅しと言った事例も散見されるため、安心してタイで事業を営むことができるよう外国人従業員(経営者)の就労については十分に気を付ける必要があります。外国人がタイで就労するためのフローを図表1で整理します。


 

(2) 外資企業に対する規制
外国資本が過半数以上の外資企業についても、外国人事業法により経済活動が厳しく制限されています。外資としての進出形態としては、駐在員事務所か現地法人の設立が一般的です。支店設立などのその他の進出形態は、認可対象業種が限定されているなどの諸条件がありますので、ここでは割愛します。

駐在員事務所については、本社の法人格のままでタイに出先機関を作るイメージであり、経費は全て本社の費用として計上されます。2018年4月から駐在員事務所長については就労ビザのみで労働許可証が不要となりました。なお、引き続きこの就労ビザの更新条件のうちタイ人従業員の雇用人数が緩和されており、外国人1人あたりタイ国籍従業員1人の雇用が必要となります。しかしながら、駐在員事務所では売上の計上(請求書の発行)が出来ません。よって、本社に対する市場調査や事業パートナー探しなど、タイにおける活動範囲が限定されます。また、現地法人への法人格の変更は出来ませんので、市場調査の結果タイ
に現地法人設立が決まり駐在員事務所の機能が不要となった際には、現地法人設立後に駐在員事務所の閉鎖を行う必要があります。駐在員事務所の設立については、以前は審査期間も含めて4ヶ月以上を要していましたが、2018年現在では外国人事業法の規制業種の対象外となり審査が不要となったため、申請書類等の要件を揃えれば即日登記が可能となっております。

現地法人については、内資(タイ資本過半数以上)とするか、外資(外国資本過半数以上)とするかで、活動可能範囲が大きく変わってきます。内資企業はタイ国籍の法人ですから外国人事業法の対象外となり、特定業種(旅行業、運送業、保険事業など)を除き事業ライセンスなどは必要ありません。つまり、業務範囲の制限はありません。もしタイでの事業展開に自由度を求める場合、内資企業であることが求められます。ただし、タイ資本が過半数以上となりますので、信頼できるタイ側パートナーを見つけることが必要です。

一方、外国人事業法による外資規制業種の場合、商務省の事業ライセンスが必要となります。この外国人事業ライセンスが無いと、売上を計上することが出来ません。さらに、外国人事業ライセンスを取得した場合でも、当該ライセンスにて認可された事業以外は実施できません。

また、商務省の事業ライセンス取得は、商務省に直接個別申請する方法(外国人事業法第17条に基づく申請)と、BOI (投資委員会)経由で申請する方法(外国人事業法第12条に基づく申請)があります。一般的に第17条に基づく申請は難易度が高いと言われており、申請業種が投資奨励法に基づく奨励事業に該当する場合は、第12条に基づく申請が推奨されます。また、製造業および関連業種の場合、工業省管轄の国営工業団地(IEAT)入居による恩典取得の検討も可能です。

BOI申請とIEAT入居による外資企業への恩典について説明します。BOI申請において得られる恩典は以下の5つとなります。(詳細は図表2参照)
 

 恩典1 : 外国人事業ライセンス発行(商務省)
 恩典2 : 外国人のビザ・ワークパーミット条件緩和
    ( 移民局、雇用局)
 恩典3 : 土地の取得(土地局)
 恩典4 : 輸入関税減免(関税局)
 恩典5 : 法人税減免(歳入局)


これらの恩典のうち、税務恩典を除く1~3まではIEATに入居することでも得られます。したがって、製造業またはIEATが入居を認める関連業種においては、IEATに入居するだけで外資にて事業活動を行うことが可能となります。もちろん、IEATの入居とBOI取得は並行して出来ますので、IEATに入居して外資としての事業活動の基盤を確保し、展開する事業に合わせてBOIを随時取得していくことも可能となります。IEATは工場操業時の認可手続き等においても優遇される傾向にあります。製造業におけるIEATの恩典とBOI恩典の比較については図表3にまとめています。
 

BOIは外国人事業法により外資規制をしているタイにおいて、奨励業種をリスト化し前述の5つの恩典を与えることで、タイへの投資を促す役割を果たしています。また、タイの国策に合わせて優先順位をつけ、タイが取り込みたい業種には税務恩典を中心によ
り厚い恩典を与え、国内産業を保護する業種は奨励業種に含めない、あるいは制限を掛けるといった仕組みになっています。例えばBOIの奨励業種である国際貿易センター(ITC)においては完成品も取り扱い可能になったものの、タイ国内販売は「卸売のみ」となっており最終ユーザーへの直接販売 (小売) が出来ず、代理店外し(いわゆる直販)を制限していると理解されています。もし外資企業がタイ国内で小売を実施したい場合、ITCで必要な資本金に加え1億バーツ以上の資本金の上積みが必要となります。このように権利と義務をうまくバランスさせた形になっています。

外資企業がタイで現地法人を設立して事業活動をする場合に、取り得る選択肢を以下にまとめます。

選択肢1 : 外資規制業種以外の事業を行う、
     または外資規制対象外の条件を満たす
選択肢2 : 外国人事業法第17条に基づく
     事業ライセンスを取得する
選択肢3 : 外国人事業法第12条に基づく
     事業ライセンスを取得する (BOI申請)
選択肢4 : IEATに入居する


選択肢1については、例えば小売の場合、資本金を1億バーツ以上上積みするという事例を示しましたが、その他にも5億バーツ以上の資本金を有する建設業、1億バーツ以上の資本金を有する仲介・代理業、各店舗の資本金が1億バーツ以上のあらゆる物品の卸売業といった、一定の条件を満たせば外資企業で事業が可能となる業種があります。

また、製造業については外資規制の対象外となっています。ただし、タイにおける製造業の定義に該当する必要があり、例えば受託加工や金型の生産などは「サービス業」に認定される場合がありますので注意が必要です。
 
※小売業 資本金1億バーツ(5店舗まで可能。6店舗目以降は
      追加で一店舗あたり2,000万バーツ。)
  卸売業 資本金1億バーツ
  仲介業 資本金1億バーツ

選択肢2と3については、前述のとおり外資規制業種に対して事業ライセンスを取得するものです。選択肢2は商務省への個別申請、選択肢3はBOI経由での申請となります。申請の難易度や恩典の有無の違いはありますが、事業ライセンスを取得するという点においては同じです。

両者に共通する重要な点は、事業ライセンスに記載されている認可事業以外は出来ないということです。事業が拡大し新たな事業が始まる場合には、必ず事業ライセンスの範囲内であるかの確認が必須となります。

選択肢4についても前述のIEAT入居による恩典に基づくものです。選択肢4は場所と業種が制限されるというデメリットを持ちますが、製造業または工業団地への入居が認められる業種の場合は、外資企業としての進出形態の一つとして検討する価値があります。なお、厳密にはIEAT入居による外資企業への事業認可と、外国人事業法の規制業種に対する事業ライセンスは異なります。IEATに入居している外資企業が外国人事業法違反で摘発されたという事例は聞いたことがありませんが、もし外国人事業法の外資規制業種に該当する場合は、IEATに入居した場合でも選択肢2または3を組み合わせると更に安心です。
 

 

進出形態の選択と会社の機関

外資規制への理解をしたあとは、会社のビジネスモデルに最も合致する「進出形態(例:株式会社、駐在員事務所、支店)の選択」と「会社の機関設計(株主構成の検討、サイン権者の設定)」を行います。事業が持続的に維持され成長していくためには、ガバナンス体制の設計が重要です。日本本社の法人運営の理念を前提に、タイにおける現地の規制を掛け合わせ、最適な体制を構築する必要があります。

タイにおいて、進出形態・株主構成・取締役の構成などは、一度決定すると変更には法律上の各種手続きが必要となるため、進出検討の初期段階できちんと整理しておくことが重要です。

 

(1)    進出形態の選択

タイにおいて認められる進出形態の主なものには、現地法人、支店、及び駐在員事務所があります。現地法人はタイにおいて会社を設立すること、そして支店及び駐在員事務所は親会社の一機関として現地に窓口を開くことです。これらはそれぞれ開設の目的が異なることから、開設のステップ、活動範囲、税務の取扱いなどが異なります。よって、進出を検討する企業は、自社の進出ビジョンおよび目的を明確にし、その目的にあった形態を選択する必要があります。

現地法人の種類には、株式会社とパートナーシップが含まれますが、パートナーシップについては日系企業による実務上の事例が少ないため、ここでは株式会社にフォーカスします。株式会社は他の進出形態と比較して、最も自由な事業活動が可能です。株式会社は株式の譲渡制限の有無により、公開会社と非公開

会社に分けられます。非公開会社は付属定款で譲渡制限株式を発行することが出来る会社で、タイで事業を行うにあたり最も一般的な形態となります。一方、公開会社は公衆に株式を募集することを目的として設立され、株式公募の目的及び株主の責任範囲につき基本定款にて明記する必要があります。非公開会社において外国人株主が50%超の場合は外資企業、50%未満の場合は内資企業とされ、外資企業に該当すると外国人事業法の規制対象となります。

支店は営利活動が可能な形態ですが、その事業が外国人事業法の規制業種に該当する場合には商務省の許可が必要となります。支店は外国法人の本社と同じ法的主体とみなされ、本社は支店における全ての責任を負うことになります。また、税務面でも日本とタイの両国において納税義務が発生するため、日本本社が常にタイ支店のリスクを負うことになります。実態としては金融機関以外の支店が認可されるケースは極めて稀であり、一般企業の進出形態の検討からは除外して問題ありません。

駐在員事務所は現地の情報収集を始めとした、非営利活動のみを目的とした形態となります。タイへの進出を検討するにあたり市場調査などの情報収集であったり、本社のための商品やサービスの手配や広報を行ったりすることを目的としており、タイへの第一歩として選択されることが多い形態です。タイでの営利活動を目的としていないため、法人税課税は受けません。ただし、駐在員事務所の形態で営利活動を行った場合には、法人所得税の課税リスクがあることにご留意下さい。
 

 

タイ進出における進出形態の選択について、これまでの話を基にまとめます。図表4に簡単なまとめをしていますが、進出形態の選択にあたっては以下の順序で考えると整理が容易です。
Step1. 進出目的が売上計上であるか
Step2. 外資100%の会社が必要であるか
Step3. 外資規制の制限を緩和する手法の検討

Step1において、もし売上計上が不要であれば駐在員事務所が最良の選択となります。それ以外の進出形態では法人の維持コストが賄えません。よって、まず始めに売上をいつから計上するのかを考える必要があります。売上を概ね1年以内に計上する目標の場合、現地法人の設立という選択になりStep2に進みます。

Step2においては、外資100%が必要であるか否かが重要な判断ポイントです。前述のとおり内資企業であれば、そもそも外資規制対象外であり自由に事業活動が出来ますので、自由度を選択する場合は内資企業の設立が必要です。一方、会社の方針として可能な限り海外法人は日本の資本100%で設立する、あるいは信頼できるタイ側パートナーが不在といった場合は、外資企業での法人設立を選択することとなり、Step3に進みます。

Step3においては、外資規制の制限を緩和する方法を検討します。先に説明した外資企業が取り得る4つの選択肢の中から選ぶことになります。

BOIや外国人事業法に関する情報は進出前でも入手が可能であり、当初より外資企業での進出を前提とされている事例が見受けられます。しかしながら、外資規制業種の場合は外国人事業法の範囲内で事業運営することが義務付けられます。また、BOIで恩典を取得した場合でも、恩典を得るために果たすべき義務が課せられます。タイへの進出を検討する際には、上述のStep1~3を一つの参考にしていただければと思います。

参考資料として、各進出形態における資本構成、メリット・デメリットなどをまとめましたのでご覧ください。(図表5)


 

(2)    会社の機関(株主構成、サイン権者)

次に会社の機関について説明します。ここでいう会社とは、タイへの進出形態で最も多く選択される非公開株式会社を指し、会社の機関のうち株主構成、サイン権者について説明します。

タイの会社法では、株主は3名以上の設置が義務付けられています。株主が1名でも会社を設立できる日本とは異なります。また、自己株式の取得も認められていません。前述のとおり、製造業では原則100%外国資本による設立が可能ですが、株主が3名以上必要であることから、親会社以外の株主が2名以上必要となります。

株主総会は初年度のみ会社の設立登記日から6ヶ月以内に開催が必要で、それ以降は年に一度開催される定時株主総会と、株主や取締役が必要と認める場合に開催される臨時株主総会があります。株主総会での議決権は、決議方法が秘密投票の場合は「1株1議決権」、挙手制の場合は「1人1議決権」となるのが特徴です。タイの会社法では挙手制が優先されます。つまり、出資比率で過半数を保有していたとしても、挙手制の場合は出席した株主数が優先されますので、出資比率とは異なる決議になるリスクがあります。したがって、予め付属定款に「株主総会決議は秘密投票による」ことを規定し、出資比率で決議できるよう
にすることをお勧めしています。

また、タイの現地パートナー企業との合弁会社などにおいて日本側のガバナンスを働かせる方法としては、株主総会の開催または決議要件として必ず「日本側の株主が出席すること」を付属定款にて規定する方法などが考えられます。ただし、ガバナンスの強化と運営の自由度は反比例します。特にタイの現地パートナー企業との合弁会社においては、トラブルなどが発生した際に両者にらみ合いとなって何も決議できないといったことにならないよう、予め合弁契約書や株主間契約書などで規定しておくことが重要です。

取締役は1名以上を株主総会で選任します。複数の取締役を選任した場合、全ての取締役あるいは一部の取締役にサイン権を付与することが可能です。タイのサイン権者(AuthorizedDirector) は日本の代表取締役と同等もしくはそれ以上に重要です。サイン権者は法人の代表者となり、サイン権者の署名および社印の押印により法律上の全ての手続が進みます。サイン権者はタイ法人の全ての権限と責任を持つことになり、労働裁判な
どの呼出状も裁判所からサイン権者宛に届きます。

したがって、日本本社からすると、ガバナンスと現地の日常業務の機動的な処理のバランスを取る機関設計が必要となります。駐在員にサイン権を渡すとガバナンスが働かないかもしれない、という懸念がある一方で、駐在員にサイン権を渡さず日本本社のみでサイン権を持つことは、日常業務を現地で完結させることができず現実的ではありません。

タイでは公的書類への署名のみならず、税金の申告・納税が毎月発生し、日常業務でも各種帳票や小切手への署名の必要が頻繁に生じるため、現地の駐在員がサイン権を有していない場合、日常業務の円滑な遂行に支障をきたす恐れがあります。そこで、日系企業では駐在員と日本本社で複数のサイン権者を置く方法を採用しているケースが見られます。駐在員に付与するサイン権の範囲に一定の制限を加えて、駐在員の裁量をコントロールすることも可能です。なお、全ての外国人サイン権者は、タイへの居住を問わず労働許可証の取得が推奨されます。仮にタイ国外で署名したとしても、その署名は有効でありタイ法人を動か
すことが出来ますので、どこで署名するかを問わず就労にみなされると解釈されます。

 

 

執筆:Toyo Business Service PCL

   (山田コンサルティンググループ株式会社 提携先)

 

 

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