タイの水産・水産加工業界の
現状と今後の見通し/前編

2019.04.07
  • 業界トピックス
  • タイ

タイの水産物・水産加工品業界は、世界的な水産商品需要の拡大を背景に今後も堅調な需要が予測される。既に多くの日系企業が参入し、ツナ缶の製造を中心とした水産加工事業を手掛けているが、タイにおけるここ数年の日本食ブームを追い風に、今後は同国の内需をターゲットとした事業の拡大にも期待が集まっている。

タイ産水産物・水産加工品の輸出状況

 

・地理的優位性等の事業展開上の好条件を背景に、タイは世界有数の水産商品の輸出国に発展した

タイは世界有数の水産商品の輸出国として知られており、地理的優位性や安価な労働賃金など、事業展開上の好条件がその発展を支えてきた。
直近20年の輸出額・輸入額を見るとおおむね増加基調で推移しており、世界的に高まる水産物・水産加工品の需要を勘案すると、安価な他国産の台頭といった懸念材料はあるものの、今後も堅調な需要が期待できる。

 

・2017年の水産物・水産加工品の輸出総額は昨年に引き続き増加し、2015年の落ち込みから回復傾向

2017年のタイ水産物・水産加工品の輸出総額は5,869百万米ドルで、2年連続の増加となった。主要輸出相手国・地域は米国、日本、豪州、カナダなどで、日本への輸出額は1,149百万米ドル、輸出額全体の20%を占め、米国に次ぐ第2位である。第3位は豪州で、これら上位3カ国への輸出額の合計はタイ総輸出額の約半数を占める。輸出総額はタイ国内におけるIUU*漁業の問題や米国人身取引報告書の警戒リスト入りの影響で2015年に大きく落ち込んだものの、後述するタイ政府などの信頼回復努力が講じて2016年以降は増加に転じている。


*IUU:違反・無報告・無規制(Illegal・Unreported・Unregulated)を意味する

 

・タイは世界最大の水産加工品の輸出国の一つで、ツナ缶の輸出は世界一

タイ水産物・水産加工品の輸出総額のうち、50%近くがツナやサバ、サーモン、イワシといった缶製品で占められている。ツナ缶生産量全体のうち国内消費は10%以下で、その大部分は輸出向けである。タイ産ツナ缶の輸出単価は、原料価格の上昇・タイ国内での人件費の上昇・バーツ高などの要因により上昇しており、エジプトではより安価なベトナム産ツナ缶の輸入を増やすなど、一部でタイ産ツナ缶からの乗り換えの動きが見え始めている。

 

・タイ水産加工企業の間では、ツナ缶といった水産加工品以外の分野への事業展開を試みる動きが広まりはじめた

タイの主要輸出品目であるツナ缶は、人件費やマグロの調達価格の上昇、バーツ高などの影響によって成長率が鈍化している。タイ水産加工企業各社は、これまでのOEMによるツナ缶生産に偏った生産体制を見直し、自社ブランドの強化や事業の多角化を試みることで収益の改善を目指している。

 

タイにおける水産物・水産加工品の輸入状況

 

・2017年の水産物・水産加工品の輸入総額は、前年に引き続き過去最高を記録

2017年におけるタイの水産物及び水産加工品の総輸入額は2,888百万米ドルで、前年に引き続き過去最高となった。主要輸入相手国・地域は中国、台湾、インドなどで、日本からの輸入額は142.8百万米ドル、タイ輸入額全体の5.0%を占め、世界第6位である。2017年は特にマグロに大きな伸びが見られ、ツナ缶の原材料用途のほか、日本食ブームに湧くタイ国内の消費向け輸出が増えたことが要因と推測される。

 

タイ国内における水産物・水産加工品の消費動向

 

・外食産業の拡大、輸入品を扱う小売店の増加や健康志向の高まりなどを背景に、タイ国民一人あたりの水産物・水産加工品の年間消費量は微増傾向との予測

都市部を中心とした外食産業の拡大や、スーパーマーケット、ハイパーマーケットといった外国産の水産物・水産加工品を取り扱う販売チャネルの増加、また健康志向の高まりを背景に、タイ国民1人あたりの水産物・水産加工品の消費量は緩やかに上昇すると予想されている。

 

・日本産水産物は主に外食産業で消費され、小売店で取り扱う場合は高級デパートやレストラン、日系スーパーが中心。中級、大衆向けチェーン店への拡大は今後の課題

近年タイ国民の間ではサーモンに代表されるような脂ののった魚の人気が高く、ハマチや中トロは既に一定の市場を確立している。JETROによると、高級店では空輸を利用するなど日本産を多く利用する一方で、中級、大衆向けチェーン店ではコストを抑えるために殆どは現地調達となっており、日本産水産物に値ごろ感が無い点が課題となっている。

 

・日本食レストランの中でも寿司関連店舗が大きく増加しており、日本産生鮮品の輸出拡大に追い風となっている

タイでは日本食の人気が高く、日本食レストランはタイ食に次ぐ件数に達し、2018年には3,000件を超えタイでは最も人気がある外国料理となっている。特に寿司関連店舗は2017年の253店舗から454店舗と大きく増加した。先述の通り、日本産水産物に値ごろ感が無い点は課題であるものの、大衆チェーン向けの価格設定努力と併せ、衛生面などにおける日本産の高付加価値性をPRすることが大切である。
なお日本食が好きな理由としては、「健康に配慮」が「味の良さ」に次ぐ割合を占め、中間所得層以上の高所得層の間で高まる健康志向を反映している。

 

 

(後編へ続く)

タイの水産・水産加工業界の現状と今後の見通し/後編はこちらから

  • 海外事業コンサルティングサービス内容
  • セミナー情報