タイ進出を踏まえた食品卸売業界のポイント

2019.03.25
  • 業界トピックス
  • タイ

食品業界においてタイ国内で幅広く販売展開していくにあたっては、財閥系・大手卸、中小卸、日系卸等の食品卸売業、特にディストリビューターとのパートナーシップが重要になる。各プレーヤーの特徴を踏まえて、誰をターゲットにして売るのか、どこで販売するのか、どのチャネルで流すのか、そのために流通経路はどうするのか、現地生産か輸出対応か、現地生産の場合現地原料を使うのか等、広く検討する必要がある。

 

食品業界の商流

タイにおける商流は日本と変わらない構造になっているものの、食品卸売業の力が強く、マスに展開していくにはディストリビューターを通して販売していく必要がある。特にモダントレードに流すためには、財閥系のディストリビューターが強力かつ広範囲な流通販売網を構築しており、小売店の棚割もディストリビューターが押さえていることが多い。

 

タイの小売市場・外食市場

小売市場や外食市場における市場規模の推移についてはレポート『タイ食品市場の概要』でも記載した通りであるが今後も成長が期待されている。小売市場はおおよそ2013年1兆6,000億THBから2016年1兆8,000億THBとCAGR3.1%で成長している。そのうちトラディッショナルトレードが約33%、モダントレードが約67%を構成しており、今後もモダントレードが増加すると予測されている。外食市場はおおよそ2013年3,500億THBから2017年3,900億THBとCAGR2.9%で成長している。日本食レストラン数はタイ全体では増加傾向にあるが、バンコクでは2017年に初めて減少している。

 

タイにおける食品卸売業プレーヤー

タイの食品卸売業(主に加工食品を扱う食品卸)は、財閥系・大手と中小の卸売業に二分される。卸売だけでなく、製造機能といくつもの販売チャネルを所有する財閥系・大手卸売業や、多数の独立した中小卸売業のプレーヤーがおり、各プレーヤーともマーケット需要を満たすために幅広い製品を提供している。商流でも触れたように、タイでは食品卸売業の交渉力が強く、特に、モールやスーパーマーケットの棚割はディストリビューターが決めているといっても過言ではない。もちろん全てではないがそれだけ影響力が強い。図表5は日系食材(特に加工食品)や輸入食材を扱う食品卸売業プレーヤーの直近の売上高・CAGR・純利益率を抽出した。

 

食品卸売業プレーヤーの特徴

<財閥系・大手卸売業の特徴>
【positive】トラディショナルトレードとモダントレードの両方に強いネットワークがあり、長年の経験と知識、 ネットワークが整っており、タイ国全域に販売が可能である。自社で小売店(ハイパーマーケット、コンビニ)を経営しており、消費者とより近い距離を持っているプレーヤーもある。タイ国外へ輸出も行っているため、ASEANの他国マーケットへの進出も検討できる。
【negative】複数のブランドと多数のSKUを持っているため、グループ内の商品が互いに競合することもあり、効率的なサービスの提供を受けられない場合もある。


<中小卸売業の特徴>
【positive】モダントレードやHoReCa(食品サービス業界。Hotel/Restaurant/Cafeの略称)との強いネットワークを持っており、主に市街地(urban area)を中心に販売している。特徴のある商品を自社の流通体制に合わせて選んで販売しており、取り扱っている商品数も少ないため、お互いに競合することなく、効率的サービスが期待できる。
【negative】流通チャネルが限られているため地域全体をカバーできない。


<日系卸売業の特徴>
【positive】日本とタイの両方の文化に精通している。日系の小売店、レストラン、ホテル等とのネットワークを持っているため日本商品の販売が有利となっている。
【negative】流通チャネルが日系に集中しがちなため、タイ企業と比べると流通チャネルのネットワークが弱くタイ消費者への販売力も限られている。
 

マーケットエントリーに向けた進出パターンの整理

ここではタイへのマーケットエントリーに向けた進出パターンについて図表6に簡単に記載する。詳細な説明は他に譲り、まずは大枠を捉えて頂きたい。以下食品関連についての論点を記載する。

▽輸出・駐在員事務所
輸出は、輸送コストや関税等が発生するため、販売価格は高価格にならざるを得ない。しかしリスクは低いため海外販売の導入としては取り組みやすい。ただし、メーカーから食品卸売業プレーヤーに丸投げしているケースも多く、しっかり販売していく、スケール化する可能性を見極めるためにも駐在員事務所を設立してプロモーションサポートをすることも必要である。

▽現地法人(販売拠点の設立)
現地法人設立における論点は多いが、現地企業と合弁で展開する場合には現地のチャネルを獲得することもできることから、販売先の幅は広がる。組む相手によって特徴が異なるため、十分な調査を踏まえて取り組む必要がある。特に多くのチャネルを持つ財閥グループと連携できれば、主要な店舗に流すことができるが取引条件の要求度は高い。

▽現地法人(製造拠点の設立)
食品製造業の場合、現地で生産できるメリットは大きい。価格競争力が高まり、現地に合わせた日本ブランドを提供することも可能となる。その際に、自社工場の設立、在タイ法人とのJVによる設立、在タイ企業への出資による拠点構築、在タイ製造業とのOEM契約などのパターンがあるため、各種パターンに合わせた十分な検討が必要である。
 

 

最後に

タイの食品卸売業界についてご紹介してきたが、日系食品製造業や食品卸売業の進出にあたり、どのような形態で進出するか、どのようなパートナーと組むかが重要となる。現地在タイ企業と組んで過去に失敗された企業も多いが、タイの食品産業における食品卸売業の存在は大きく、タイで大きなビジネスをしていくにあたっては、特にディストリビューターとのパートナーシップが必要であると考える。そのためにも、まずは自社がタイで何を実現したいのか、そのための戦略はどうするか、またASEAN全域を踏まえてタイをどのような位置づけとするのか等を検討の上、タイへのマーケットエントリーを実現して頂きたい。
我々は日系食品関連企業の進出や現地での販売拡大をサポートするため、在タイのディストリビューターやそれを取り巻くプレーヤーと定期的なインタビューを継続しており、日系企業に求める声を拾っている。今後それらの声もご紹介しつつ、日系企業への期待を後押しさせて頂きたいと考えている。
 

 

 

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

 

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