タイの水産・水産加工業界の
現状と今後の見通し/後編

2019.04.07
  • 業界トピックス
  • タイ

本編は前編の続きです。

タイの水産・水産加工業界の現状と今後の見通し/前編はこちらから

 

タイの水産・水産加工業と「持続可能な発展」

 

・IUU漁業などの違法漁業に対する国際世論の批判を受け、タイ政府は取り締まりを強化することで調達過程の透明化を目指す

米国国務省の人身売買や強制労働に関する2014年の報告書(TIPレポート)の中で最低ランクTier3に分類されたことや、2015年における欧州委員会からのIUU漁業取り締まりの通達を受け、タイ産水産物・水産加工品の輸出額は2015年に著しく減少した。その対策として、タイ政府は違法漁業対策指令センターの創設や人身売買や強制労働が疑わしい事業者の摘発などを講じタイ産水産物の信頼回復に注力。その結果、2016年に発行されたTIPレポートではTier2に格上げされ、2015年に落ち込んだ輸出額が増加に転じるなど、タイ政府の信頼回復措置は一定の成果を上げている。

 

・タイ投資委員会(BOI)は、近代的な製造工程や最新の機械設備の導入などを条件とした投資恩典を整備。一部地域では一定の条件を満たした中小企業への優遇策を打ち出している

現在の政策は、2015年から2021年までの申請に適応され、企業規模や進出地域によって3~13年の法人所得税免除期間が付与される。

 

・「サステナブル」漁業に順応する動きが、民間大手を中心に見られるようになった

今日の水産業・水産加工業では、欧米を中心にサステナブル(持続可能な)漁業がトレンドになっている。「海のエコマーク」ラベルの認証元で知られる海洋管理協議会(MSC)によると、世界で販売されるMSC認証商品は右肩上がりで増加している。
こうした動向を受け、タイ企業の間でもサステナブル漁業への対応策を打ち出す動きが広まりつつある。

 

日本産商品の需要拡大に期待がかかる分野

 

・製造、卸売、輸出入仲介業など、多くの日系水産物・水産加工企業がタイを拠点とした事業に従事している

タイには多くの日系水産物・水産加工企業が参入している。大手企業はもちろん、先述した日本食ブームを追い風として、日本食レストランや日系食品メーカーからの需要を取り込み現地で活躍する中小企業も多い。

 

・タイを拠点とした第三国輸出の増加とそのための原材料輸出の一層の拡大に引き続き期待

世界的な水産物需要の拡大から、今後もタイを拠点とした水産加工品の第三国輸出は一定の需要が見込まれる。また、日本の水産物業界にとってはタイ国内需要向け生鮮品の輸出拡大に期待はかかるものの、現地加工向け原材料の輸出が大半を占める現在の輸出構図に遠面は大きな変動は無いとの前提に立つと、タイへの原材料輸出の一層の拡大のほか、タイ国内における加工・第三国への輸出事業の拡大に引き続き期待がかかる。

 

・日本からタイへの水産物の輸出は食品加工用の原材料がほとんどだが、今後はタイ国内需要向けの輸出拡大に期待がかかる

・輸出品目:寿司を中心とした日本食ブームの影響で、タイ近海で漁獲できない・主要輸入元国が扱わない水産物の取引品目の増加が期待されている。既に市場が確立されているブリとマグロに加え、寿司ネタとして需要が増加しているホタテなどの貝類や、ウニ、カニの人気も上昇中。また、タイへの輸出が禁じられているフグの認知度も向上していることから、今後フグ輸入について政府の規制緩和が待たれる。
・売り込み先:日本の百貨店や日本食高級レストランといった従来の売り込み先に加え、地方で増加する寿司関連店舗を中心とした日本食レストランでの需要掘り起こしに期待がかかる。現在タイでは東部経済回廊構想(EEC)プロジェクトの一貫として都市部と地方部を結ぶローカル鉄道の複線化といった交通インフラ網の整備が進んでおり、寿司ネタなど特に鮮度を重視する商品の輸送効率は大きく改善すると見られる。

 

おわりに

 

タイには各国から水産加工を請け負ってきた豊富な実績や、寿司を中心とした昨今の日本食ブーム、また、BOIの投資恩典では中小企業向けの優遇措置が講じられているなど、投資し易い環境が整備されている。
JETROの調査によると、2017年にタイに進出した日系企業のうち中小企業が大企業を上回っていた。ベトナムなど人件費が安価な国は他にもあるが、水産・水産加工業を営む中小企業が海外展開をする上で進出し易い条件が整っているという点は、他国には無いタイの魅力だと言える。

 

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

 

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