タイの高齢化に関わる事業のトレンド/前編

2019.08.08
  • 経営トピックス
  • タイ

1.タイの高齢化

  • タイは現在急速な高齢化に直面しており、2005年には「高齢化社会」(高齢化率*10%超) に突入した。今後、2021年には「高齢社会」(同20%超)、さらに2031年には「超高齢化社会」(同28%超)に入ると予想される。  

*60歳以上の人口が総人口に占める割合(タイでは60歳以上を高齢者とする)

 

  • タイでは出生率の低下と長寿命化が同時に進行し、過去数十年間で人口構成に劇的な変化が生じている。下のグラフは、各年齢層の人口が総人口に占める割合の変化を示したものである。1970年には全体の約半分を占めていた14歳以下の人口の割合は、以降年々大幅に減少し、2017年には18%になった。一方1970年には5%弱だった高齢者(60歳以上)人口の割合は、2017年には17% 超えた。
  • タイ国家統計局(NSO)公表のレポートによると、2017年のタイの高齢者人口は1,131万人。地域別にみると、数では東北部が約357万人と最も多く、高齢化率では北部が21.1%と最も高い。
  • さらに同レポートは、中高所得層の高齢者がバンコクや中央部に集中していることも示している。
  • 経済・社会の状況の変化に伴って、独居高齢者数は上昇傾向にあり、その割合は1994年の3.6%から2017年には10.8%に上昇している。
  • 高齢化に伴って、タイでは医療・福祉関連の支援や政策がことのほか重要になっている。独居者に限らずあらゆる高齢者の間で、介護や日常生活のサポートに対するニーズが高まっているためである。政府はこの重要性を認識し、高齢者の生活の質の向上を目指して、国民健康保険制度、高齢者向け集合住宅、退職貯蓄制度などの取り組みに努めている。
  • 国内の高齢者人口が増加していることに加え、退職後の外国人の間では費用の安い移住先としてタイの人気が高い。物価、医療水準、気候に加えて、リタイアメントビザ(退職者向けビザ)の取りやすさが多くの外国人を惹きつけている。
  • タイ入国管理局によると、リタイアメントビザを申請する外国人の数は年々増加し、2012年の約4万人から2018年には約8万人になった。国別の内訳は、多い順に英国、米国、ドイツ、中国、スイス、フランス、オーストラリア、日本となっている。また移住先の県別の内訳は人気の高い順に、チョンブリー、バンコク、チェンマイ、プラチュワップキーリーカン、プーケットとなっている。この5県への移住者数の合計はタイ全体の約70%を占める。

2.高齢者をめぐる医療保障制度の状況​​​​​​

  • タイには様々な医療保障制度がある。加入者数が最も多いのは、タイ国民医療保障庁(NHSO)が提供する国民健康保険制度(UCS)である。
  • UCS以外の公的保障制度では対象外とされる全年齢層のタイ国民には、国民健康保険カードUC1提供される。ちなみに、UCS以外の保障制度とは被雇用者社会保障制度(SSS)、公務員医療給付制度(CSMBS)などをいう。全高齢者の約84%がUCSの恩恵を受けている。
  • 民間医療保険は、高齢者が高額医療費の負担を抑えるうえで重要な役割を果たしている。タイ国家統計局(NSO)の調査によると、民間医療保険は2007年から2017年にかけて、高齢者個人の加入数および雇用者が従業員のために支払っている加入数の年平均成長率がそれぞれ36%および39%と大きく伸びた。中間所得層の拡大と医療費の急上昇があいまって、需要を押し上げる主な要因となっている。​​​​​​​​​​​​​​ 

[1] カード保有者は、居住地域内の医療センターおよび契約病院で、無料で治療が受けられる。

  • 政府は高齢者社会福祉開発センターと呼ばれる施設で高齢者の長期住宅支援も行っている。現在こうした施設はタイ全国に10カ所以上あり、食料、医療、宗教活動(礼拝・説教など)、娯楽といった生活に必要なサービスを提供している。しかし、高齢者全員を支援することは不可能であり介護者も不足していることから、身の回りのことが自分でできる高齢者のみを受け入れている。政府の住宅支援の中で、最も基本的な価格水準(年間20万~40万バーツ)で提供されている施設である。
  • 公的医療保険やその他の医療制度の拡大によって、高齢者の増加への対応がなされてはいるものの、量的にも質的にもその支援はまだ十分とはいえない。このため、民間医療サービス、特に現在増加傾向にある、より高度な医療を求める中高所得層高齢者をターゲットとするサービスに対する需要が高まるものと期待される。

(後編へ続く)

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