タイの高齢化に関わる事業のトレンド/後編

2019.08.08
  • 経営トピックス
  • タイ

本編は前編の続きです。

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3.  高齢化関連の事業

 

高齢者ケア

  • タイには高齢者に関わる多くの事業タイプが存在する。例えば、ナーシングホーム、在宅ケア、長期滞在型ケア施設および病院が運営するケアセンターなどである。事業者は、高齢者の日常生活、健康管理、リハビリ、社会活動などをサポートするためのサービスを提供する。
  • 複数種類の高齢者ケアサービスを提供する事業者もある。例えば、Kluaynamthai 2 Geriatric Hospital(クルアイナムタイ第2老人病院、下表内5. 参照)では、必要に応じて病院でのケアサービスおよび自宅でのケアサービスを提供する。タイの高齢者ケア事業に対しては、国内のみならず日本やスイスなど外国の投資家も関心を示している。高齢者ケアに関する投資について下表で詳述する。
  • 上述のプロジェクトの主な成功要因は、[1] 品質、[2] 立地、[3] 信頼性、[4] 従業員(とりわけ介護士)の報酬・福利厚生の4つである。介護士はヘルスケア事業で重要な役割を果たしていると考えられている。このため、介護士が不足していたり、介護士が提供するサービスの質が悪かったりすると、企業にとって致命的な問題に発展しかねない。従って新規従業員の採用や既存従業員の維持のために、介護士に対して魅力的な報酬や福利厚生を提供するということは極めて重要である。
  • 投資を成功させるには上の4つの要因に加えて、高齢者のニーズや状況を十分に把握しておく必要もある。 

  • タイの高齢者ケア事業の成長と発展は、国内外の投資家に事業機会をもたらしている。独居高齢者数は増加傾向にあるとみられ、つまり介護者が不足することが予想される。こうした社会背景があるため、高齢者ケア事業は今後も引き続き拡大するものと思われる。

 

ウェルネスセンター

  • タイの人々、特に中高年(50歳以上)の間で高まる健康志向によって、健康や予防医療に関連する需要が拡大している。
  • これまでのところ、タイでウェルネスセンターを運営しているのは民間の病院経営者であり、患者のアンチエイジングや高寿命化を目指している。大半のウェルネスセンターでは、外国の最新技術を取り入れた予測診断や予防的治療を提供している。
  • 上述のプロジェクトの主な成功要因は、最新技術の導入に加えて、世界標準の品質、顧客調査(患者のニーズの把握)、幅広い提携ネットワークである。ただし今後は看護師や多言語が対応可能なスタッフなど医療・介護業界の人材不足が、ウェルネスセンター事業における最大の課題になることが予想される。

高齢者向けの住宅プロジェクト・集合住宅

  • タイが「超高齢化社会」に向かいつつあることから、従来高齢者向け住宅の経験がない不動産会社も、高齢者向けの住宅プロジェクト開発を視野に入れるようになっている。そうした住宅は、高齢者の生活スタイルのニーズに対応する必要があるが、Sawangkanives(サワンカニベー、下表内4. 参照)の取締役によると、タイの高齢者は以前より活動的で、より人との交流を楽しむようになっているという。
  • 現在のところ、タイの高齢者向け住宅市場の規模はさほど大きくないが、過去2年間で中高年世代、特に独身者と夫婦のみの世帯の住宅需要が増加している。この世代は、引き続き同居せずに暮らしたい、加えて病院の近くや医療サービスへのアクセスのある場所に住むことで医療サポートを確保したいと考えている。
  • タイにおける高齢者向け住宅プロジェクトの運営者は、医療サービス提供者、不動産開発会社、公共部門など多岐に及ぶ。医療サービス提供者・病院は専門知識や既存のリソースを活用してプロジェクトの敷地内で医療サービスを提供している。不動産開発会社もこの市場に潜在成長力があるとみており、高齢者向きの施設開発を増やし始めている。一方、公共部門(例えば財務省財務局、赤十字社、社会開発・人間安全保障省高齢者サービス局)なども国内の複数の地域で高齢者向けの集合住宅を開発する計画である。ただし、医療サービスを提供するためには民間部門との共同出資によるプロジェクトを実施する必要がある。
  • 上述のプロジェクトの主な成功要因は、サービスの質、高齢者に配慮した設計、信頼性、立地である。高齢者向けに特化して設計された住宅は、転倒や事故の防止といった、安全性の高い機能を備えているべきである。

4.高齢化関連の事業への投資に対する政府の支援策

  • 高齢化は、タイに限らず世界各国の医療セクターが直面する課題のひとつである。高齢者数の継続的な増加に伴って、高齢者の健康を支えるサービスに対する需要は今後も引き続き拡大するだろう。
  • 一方、生活費、医療水準、気候といったタイの魅力によって、外国からの定年後移住者の数も増加傾向にある。つまり、そうした移住者もタイの高齢者ケア事業のターゲット顧客とみなすことができる。
  • こうした背景を受け、国内外両方の投資家がタイの高齢者ケア事業への投資に関心を寄せている。政府は、新たな定年後移住者の獲得や投資の促進を目的として政策を打ち出している。例えば、高齢者向け長期滞在ビザの発給や高齢者向け集合住宅の開発などである。
  • タイ投資委員会(BOI)による医療機器製造に対する投資奨励策2は、今後、高齢化関連の事業、特にウェルネスセンターや高齢者ケア事業に対する追い風になるだろう。メーカーへの投資促進は、高齢者関連施設の医療機器コストの低下をもたらすと予想されるためである。
  • タイ政府は高齢化に関連する課題について十分に認識している。しかし、その課題解決には官民セクター間の統合的な戦略が必要であると思われる。高齢化への準備としてタイ政府に実施可能な施策としては、高齢者に優しいインフラや利用しやすい医療サービスを整備し、高齢者の生活の質を向上させることなどが考えられる。

[1] 法人税の免税措置を受ける資格があるのは、医療業界の研究開発、ハイテク医療機器製造、

医療機器用電子部品製造である。最大で8年間免税が受けられる。

 

 

まとめ

タイでは、2021年には高齢者人口が総人口の20%(約1,300万人)を超えて「高齢社会」に突入する見通しであり、外国からの退職後移住者の数も引き続き増加傾向にある。社会や生活スタイルの変化とともに人口動態の変化も同時に起こっていることで、新たな事業機会が生まれている。

このため近年、高齢者関連事業の競争が激しくなっており、高齢者ニーズに対応する製品やサービスの種類が増えている。今後こうした競争はますます激化するものと予想される。

市場規模が拡大しているにも関わらず、これまでのところ高齢化関連の事業の成功者はごくわずかである。市場で成功を収めるためには、かしこく投資することが必要になる。投資成功の要因としては、幅広い種類のサービス・製品の提供、適切なパートナーを探すこと、最新技術の活用などがあげられるが、市場や顧客の現状についての十分な把握も重要になる。

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

 

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