タイにおける交通インフラ開発工事

2019.09.06
  • 業界トピックス
  • タイ

▮CONTENTS
 ・タイ建設業界の概要
 ・タイの交通インフラ整備の現状
 ・タイの交通インフラ開発の動向
 ・タイの主要な建設会社
 ・外資系建設会社のための主な留意点
 ・まとめ

 

タイ建設業界の概要

  • タイの建設投資額は、2012年以降1兆バーツを超えている。
  • 2018年の内訳は、公共工事が56%、民間工事が約44%だった。
  • 近年、大規模なインフラプロジェクトは、タイ建設業界の主な牽引力となっており、 2014年から2018年の年平均成長率(CAGR)は12%を記録した。
     


タイの交通インフラ整備の現状

  • 道路網:タイ国内でもっとも広い範囲をカバーする交通インフラであり、総距離は約70万2,000km(うち85%は地方道)に及ぶ。国内でもっとも一般的な輸送手段として、旅客と貨物の80%以上に利用されている。しかし、交通渋滞、特にバンコク内や主要都市間の幹線道路の渋滞が、物流コストの高騰を招いている。
  • 鉄道網:開発とメンテナンスが不十分で、インフラとして整っていない。また多くが単線であることが遅延発生の原因となっている。こうしたことから、都市間を移動するための交通手段としては一般的ではない。ただし、バンコク首都圏(BMR)で運行されている電車については、交通渋滞を避ける手段として都市部の住民の間で普及が進んでいる。
  • 空路:国際旅客輸送の主要な手段である。2018年の空路利用者の約94%が国際空港を利用した。
  • 海上輸送:タイの国際貨物において金額・量ともに首位である。3,219kmの海岸線に沿って43の港湾があるが、 2017年には、そのうちの3つの主要な国際港、バンコク港、レムチャバン港、マプタプット港が全港湾による取扱貨物の80%以上を担った。
     

 

タイの交通インフラ開発の動向

インフラ建設が今後数年にわたって建設業界を牽引する見込み

  • 政府は、域内の物流ハブとしての国の発展を目指している。様々な交通インフラに関わる大規模プロジェクトの推進や関連法案の改定が実施されており、これらがインフラ投資に向けた政府の意気込みを表している。
  • バンコク首都圏(Bangkok Metropolitan Region: BMR*)と東部経済回廊(Eastern Economic Corridor: EEC*)が近年の主要なインフラ開発地域であり、その他の県(チェンマイ、プーケット、コーンケーン、ナコーンラーチャシーマーなど)は今後の開発対象地域となっている。
  • 2015年から2022年までの交通インフラ整備に対して約2.8兆バーツの投資が計画されている。これにより、今後5年にわたって国内インフラ建設が急増するものと見込まれる。

*BMR … バンコク、ノンタブリー県、サムットプラーカーン県、サムットサーコーン県、パトゥムターニー県、ナコーンパトム県
*EEC … チョンブリー県、ラヨーン県、チャチューンサオ県 
 

近年の交通インフラの主要な投資先は、鉄道システム

  • 輸送コスト削減のため、タイでは旅客、貨物ともに鉄道輸送が推奨されている。そのため、都市間の複線鉄道、高速鉄道車両、バンコク首都圏や主要都市の公共交通システムへの投資が加速している。
  • 政府は今後10年間で鉄道の複線化、高速鉄道を含む国内約6,000 kmの鉄道ネットワークを開発することを計画している。
     

政府は、公共部門の建設とサービス事業分野での官民パートナーシップ(PPP)活用を推進

  • PPP方式は、民間セクターの専門知識・技術や資本を活かすことで、公共サービス(特に交通インフラに関わる整備やサービス)の効率化を実現する ための重要な手法として活用されている。
  • 「PPP戦略計画 2017-2021」に含まれる交通インフラへの投資額は、全体の約94%を占め、その規模は1.4兆バーツである。
  • 同戦略計画では、高速鉄道車両、都市部の鉄道システム、有料道路、物流港への民間セクターの投資が必要とされている。
     

 

  • 国内のインフラ開発を加速させるため、 2015年からPPPファストトラックプログラム(PPP Fast Track program)が施行された。これにより、プロジェクトの準備や承認、また事業者選定に関わる期間が約40ヶ月から20ヶ月に短縮された。特に東部経済回廊(EEC)内のプロジェクトついては、契約締結などに必要な期間が8ヶ月~10ヶ月へと大幅に短縮された。 
     

 

建設業界の市場競争はさらに激化

  • タイの大規模インフラ開発計画は外国投資を惹きつけており、近年、中国企業数社が大規模プロジェクトに応札している。また、日本、欧州、韓国、シンガポール、マレーシアといった多くの国の建設会社が、複数分野のインフラプロジェクトに関心を示している。
  • 2017年には「50億バーツ以上の公共工事は国際入札とすること」とするガイドラインが発表され、外国の建設会社による公共建設プロジェクトへの参入機会が拡大した。
  • 一方で、外国の建設会社は、ジョイントベンチャーやコンソーシアムを通じた国内の建設会社との協力による入札を増やしている。 

 

中小規模の建設会社の機会が拡大

  • 中小規模の建設会社は、大手からの下請け受注を通じて、インフラ建設の成長の恩恵を享受している。
  • 民間セクターの成長が鈍化している時期には、事業の主軸を民間セクターにおく一部建設会社が公共インフラ案件を多く取り込むという状況がみられる。
     

事業の多角化の流れ

  • 業界の熾烈な競争が、持続可能な成長のための新たな機会追及へと建設会社を駆り立てている。

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¶近隣諸国への展開

  • CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、べトナム)での経済の発展やインフラ開発の加速は、 2年ほど前から、特にダムや発電 施設の分野で、タイの建設会社からの投資を惹きつけている。 
  • 近年は一部の中規模建設会社が、 CLMVでの事業拡大に乗り出しているが、特にカンボジアの人気が高い。これはカンボジアでは100%外資企業が建設事業を行うことが認められているなど積極的な取り込みが行われているためである。
     

¶新しいビジネスの展開

  • 一部の建設会社は、専門知識を生かして不動産開発にも参入している。長期的には、そうした不動産が既存事業に加えて新たな収益源になるものと見込まれる。

 

タイの主要な建設会社

  • タイで上場している建設会社の上位5社が、国内の公共インフラ建設工事をほぼ独占している。
    具体的には、Italian-Thai Development Plc. (ITD)、Sino-Thai Engineering and Construction Plc. (STEC)、Ch. Karnchang Plc. (CK)、 Unique Engineering and Construction Plc. (UNIQ)、 Nawarat Pattanakarn Plc. (NWR)である。
  • 外国の建設会社は、国内勢とのジョイントベンチャーやコンソーシアムによる協業を通じて公共事業に携わっている。
     

 

外資系建設会社のための主な留意点

外資による建設事業に対する規制

  • タイは、株式の過半数を外国株主が保有する企業が国内で建設事業を行うことについて規制している。 ただし資本投資額が巨額な企業は例外とされる。
  • 外国人労働者が建設技術者や建築士として就業することも禁止されている。したがって、建設会社がエンジニアリングや設計に関わる場合はタイ人の技術者・建築士を雇わなければならない。
     

国内の建設事業に関わる規制
外資系企業がタイで設計、エンジニアリング、建設に関わる事業を行う場合、商務省から外国人事業許可(Foreign Business License:FBL)を取得しなければならない。
例外: 外国人の最低資本が5億バーツ以上の企業である場合は、FBL要件を満たしていなくても、機械や技術または特殊な専門性を必要とする
インフラ建設事業(公共施設のライフラインや通信施設に関わるもの)を行うことができる
Foreign Business Act (外国人事業法) B.E. 2542 (1999)
 

外国人就労規制
外国人は、建設に関連する以下の業務に従事することができない。

  • 土木技術分野における設計・積算、システム構築、リサーチ、計画立案、試験実施、建設管理、建設に対する提言に関わる業務。ただし特殊な専門性を必要とするものを除く
  • 建築分野における設計、設計図作成、価格見積、施工管理、施工に対する提言に関わる業務

Royal Decree Prescribing Occupations and Professions Prohibited for Foreign Workers(外国人就労を禁ずる仕事及び職業を定める勅令) B.E.2522 (1979年)

 

公共インフラ建設工事の参入に関わる外資規制

  • 特定の公共建設プロジェクトに入札する場合、建設会社は事前に財務省に登録しなければならない。関連する法令によると、外国資本が過半数の企業には登録資格がない。
  • ただし例外として、特殊な専門性や先進技術を必要とする大規模建設プロジェクトには、国際競争入札を通じて外国企業も参加できる。 

 

公共インフラ建設への参入に対する規制

▼登録が必要な建設種別

  • 道路
  • 橋梁(例:高架道路、地下道、高架幹線道路、桟橋)
  • 灌漑システム
  • 川底・港湾浚渫
  • 堤防・擁壁
  • 海洋工事

▼登録・入札に必要な条件

  • 株式会社(Company Limited): 51%以上の資本をタイ人またはタイ法人が保有し、かつ取締役の過半数がタイ人である企業
  • 株式公開会社(Public Company Limited, PLC): 50%以上の資本をタイ人またはタイ法人が保有し、かつ取締役の過半数がタイ人である企業

▼管轄省庁: 財務省中央会計局
Notification of Central Price and Business Operation Registration Committee Re: Rules, Procedures, and Conditions for the Construction Business Registration Eligible for Submitting Proposal to Public Agency (中央価格事業運営登録委員会の告示:公的機関への入札条件としての建設事業登録の規則、手順、条件について) B.E. 2560 (2017) 

 

例外: 外国企業は、以下に当てはまる大規模な建設プロジェクトの国際入札に応札できる。

  • 投資額が50億バーツ以上のプロジェクト
  • 専門技術や先進技術、または専門の技術者や先端の専門性を有する建設のプロフェッショナルが必要とされる高度なプロジェクト(例: 高架幹線道路、地下トンネル、港湾、空港など)

Cabinet Approval on February 28, 2017 regarding the rule of public procurement by international bidding(国際入札による公的調達の規則に関わる2017年2月28日の閣議決定)

 

 

まとめ

  • 近年タイは、物流コストの削減や地域間の連結性向上による競争力強化を目指して、交通インフラ投資の規模を拡大している。
  • 交通インフラ整備に対する約2.8兆バーツの投資計画のもとで複数のプロジェクトが進められていることから、今後タイでは建設関連の巨大なビジネスチャンスと成長機会がもたらされるものと期待される。
  • 外国企業からの投資促進を目的として、一部の法令や公的手続きが緩和されたとはいえ、外資系企業がタイで建設業を行う上ではいまだに規制がある。そのため、外国の建設会社がタイで投資をする場合のもっとも一般的な方法は、現地パートナーと協力して、建設事業を行うことを目的にタイ資本が過半を占める建設会社を設立する、または特定のインフラプロジェクトへの入札を目的にジョイントベンチャーやコンソーシアムを設立するというものである。そうした投資により、規制の回避、さらには国内市場の知見やネットワークの活用が可能になる。
  • 国内の建設会社としても資本増強や技術競争力向上のために外国企業をパートナーとして求めていることから、今後もインフラプロジェクトにおいてはさらに多くの提携が国内外の建設会社間で結ばれるものと予想される。
  • タイ建設業界の拡大に伴って表面化する主な課題としては、労働力不足と建設資材価格の高騰が考えられる。したがって建設会社は、いかに技術力の活用及び建設資材のサプライチェーンマネジメントの強化を行うかについて検討する必要がある。
     

 

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

 

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