タイ不動産開発市場の注目トレンド

2020.01.22
  • 業界トピックス
  • タイ

Contents


不動産市場に変化をもたらすメガプロジェクト
成長するバンコクの複合施設開発市場
建設会社・不動産デベロッパーに多角化の動き
市場に対する中国の影響力
拡大傾向にある国内・国外デベロッパー間の提携
まとめ

 

 

不動産市場に変化をもたらすメガプロジェクト

  • タイでは過去3、4年の間に大規模プロジェクトに多額の資金が投じられ、様々な面で不動産市場に影響を与えている。例えば、大量公共輸送網の開発によって、都市生活者のアクセスや利便性向上という恩恵がもたらされている。加えて不動産需要、特にメガインフラプロジェクトの近隣地域での需要が伸びたことで、市場が成長した。ただし一方では、供給過剰や不動産デベロッパー間での競争激化などが問題になっている地域もある。
  • 多数のメガプロジェクトが実施・計画されており、今後5年間で不動産セクターに大きな機会と成長をもたらすものと期待される。現時点でのインフラ開発の主な対象地域はバンコク首都圏(BMR)と東部経済回廊(EEC)である。今後予定されている開発ではその他の県(チェンマイ、プーケット、コンケン、ナコンラチャシマ)が対象とされている。


バンコクの大量公共輸送網の開発

  • バンコクの大量公共輸送網の開発は、コンドミニアム市場を後押しする主な要因となっており、過去数年間に開発された多くのコンドミニアムプロジェクトの中でも、駅に隣接する地域の人気が高まっている。
  • 今後5年間で、平日1日当たり約360万人の乗客が大量公共輸送網を利用するようになるだろうと推定されている。これにより、主要な駅の周辺で住宅・非住宅両方の不動産に対する投資機会が生まれている。特に、新たに中央駅となるバンスーグランドセントラル駅および主要乗り換え駅となるマッカサン駅の周辺の人気が高い。
     

東部経済回廊(EEC)の投資・開発に関わる政策

  • EECの投資促進政策とインフラ開発(高速列車、ウタパオ空港拡張)によって外国直接投資(FDI)が増加しているため、短期的には工場や倉庫、長期的には住宅用不動産の需要が高まっている。この動きを受けて、大手デベロッパーが今後の開発用として有望な土地を購入し、地価の高騰を招いている。
  • コリアーズ・インターナショナル(不動産サービス会社)によると、チョンブリー県とチャチュンサオ県では、過去数年で地価が30〜50%上昇し、ラヨーン県の一部の地域では2〜4倍になっている。
     

 

成長するバンコクの複合施設開発市場

  • 入手可能な土地が限られていることに加えて地価が高騰しており、土地の効率的な活用、来店客数の増加、リスクの分散を目指した複合施設開発の需要がさらに高まっている。
  • 2019年から2026年の間にバンコクで完成予定の複合施設の総床面積は600万㎡以上である。 
  • こうした複合施設は主にオフィスビル、コンドミニアム、ホテル・サービスアパートメント、小売スペースなどで構成される。  
  • 資本に余裕があり大規模な土地資産を保有するCPグループやTCCグループなどの財閥系企業は、複合施設開発に積極的に投資している。
  • 一等地での複合施設開発は借地で行われ、大半は更新オプション付きの30年リース契約を結んでいる。
  • 複合施設開発の主な対象地域は、バンコク都心部のスクンビット、ルンピニー、ラマ4世通りなどである。これに加えて、大量公共輸送網の開発に伴ってラチャダピセーク、ラマ9世通り、パホンヨーティン、およびバンコク郊外にも拡大している。
     

建設会社不動産デベロッパーに多角化の動き

建設会社

  • 建設市場の競争激化を受け、建設会社は専門知識を活用することで利益率の向上が望める不動産開発にも参入し、事業の多角化を進めている。

不動産デベロッパー

  • 住宅不動産デベロッパーも、オフィスビルや小売スペースなど賃貸不動産への参入による事業の多角化の動きをみせている。この動きに加えて、継続的な収入源として、ホテルに対する関心も高まっている。

 

市場に対する中国の影響力

  • タイでは外国人による不動産の所有は土地またはコンドミニアムの49%以下と定められている。従って、外国人がタイで購入するまたは所有権を持つことができる唯一の不動産の形態はコンドミニアムである。
  • タイのコンドミニアムの主な外国からの購入者はかつてはヨーロッパと米国だったが、2015年以降は、中国からの購入が最も多くなっている。 
  • 2017年以降のタイのコンドミニアムに対する国外からの需要は、主に中国からの需要にけん引されて増加が著しい。 
  • 中国不動産価格の高騰による利回り低下が、中国(香港を含む)からの外国投資を後押ししている。具体的には、高い賃貸利回り、低い税率、他国よりも低価格であること、タイのコンドミニアムに対する中国投資家の需要があることが主な要因である。
  • 中国からタイへの外貨流入額には制限が課されているにも関わらず、タイのコンドミニアム購入のために中国から送金される外貨金額は増加傾向にあり、2016年から2018年にかけての年平均成長率は60%を超えている。
  • タイのコンドミニアムの中で、バンコク、チェンマイ、プーケット、パタヤ、サムイなど有名な観光地にある物件が特に外国購入者の人気を集めている。

  • タイのコンドミニアムに対する中国からの投資が増えている主な要因としては、以下があげられる。

♦フリーホールドによる所有、つまり永久的に不動産を所有できる
♦個人の不動産所有については数に制限がない
♦文化や食べ物になじみがある
♦中国からの駐在員や観光客の増加が賃貸事業に大きな機会をもたらしている
♦低価格で価格競争力がある
♦他のASEAN諸国(例えばマレーシア、シンガポール)に比べて税金が安い
♦質の高いインターナショナルスクールの学費が手頃である

  • 中国からの需要の高まりがタイのコンドミニアム価格を押し上げている。タイ中央銀行発表の住宅価格指数によると、コンドミニアム価格は2015年以降、他の住宅不動産を上回るペースで上昇している。

 

拡大傾向にある国内・国外デベロッパー間の提携

  • タイ不動産市場に参入する外国人投資家は同国の地理的優位性とインフラ開発プロジェクトの多さに魅力を感じている。ただし外国人の土地・不動産の所有は規制の対象となっているため、参入にあたっては国内企業との提携を余儀なくされている。
  • 国内企業の側からみると、外国企業との提携は、技術やノウハウ、事業の多角化、資本力、顧客ベースなど多くの面で競争力の強化につながっている。このため国内企業の側からも合弁プロジェクト開発を増やす傾向にある。
  • 過去2、3年で、国内企業と国外企業の合弁プロジェクト件数は増加が著しく、特にバンコクの大量公共輸送網のルートに沿って、バンコク首都圏(BMR)に集中している。さらに、観光客の増加により、チェンマイ、プーケット、ホアヒン、チョンブリー(パタヤ)などの主要な観光地に対する関心が高まっている。
  • 供給過剰が懸念されるコンドミニアムだが、コンドミニアムのプロジェクトは短期間で投資が回収できることから、国外からの人気が最も高い。
  • その他の不動産としては、長期にわたって経常的に収入が得られると考えられているサービスアパートメント、ホテル、オフィスビルに対して、やはり国外からの関心が高まっている。地価の高騰や購買力の低下といった現在の市場環境を受け、ポートフォリオのリスク分散を目的としてサービスアパートメントに投資する外国企業もある。
  • タイ不動産開発市場への外国投資に積極的な国は日本と中国である。
  • そのうち住宅開発については日本企業の占める割合が圧倒的に高い。2018年末時点の三井不動産と三菱地所グループを併せた合弁投資額の合計は2,000億バーツを超え、両社はタイ最大手の外資系住宅不動産デベロッパーとなっている。
  • 近年、タイ不動産開発市場における中国企業のプレゼンスが高まっている。要因としては中国に比べて低コストで済む上に収益率が高いことや、中国からの需要が堅調であることがあげられる。
  • 日本企業と中国企業は、投資や国内企業との提携に際して、以下の通りそれぞれ異なるアプローチをとっている。
     

 

まとめ

  • タイ不動産市場は過去数年間で目覚ましい発展を遂げている。経済の基礎的条件が良好であることに加えて多数のインフラプロジェクトが実施・予定されていることが、国外のデベロッパーを惹きつけており、資本力、顧客基盤の拡大、イノベーションの点で、同市場にとっての追い風になっている。
  • メガインフラの開発、不動産会社の多角化、複合用途不動産の増加、外国投資の流入といった主なトレンドは、今後も数年間にわたってタイ不動産市場に継続的に影響を与えるだろう。こうしたトレンドは市場の潜在成長性を大きく高める一方で、今後の課題の要因ともなる。従って、デベロッパーや投資家は、市場に関する総合的な情報を事前に収集し、慎重に分析してから計画を立てる必要がある。    

 

 

執筆:YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
   YC Capital Co., Ltd.

   (山田コンサルティンググループ株式会社 タイ現地法人)

 

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