インドのEコマース市場と物流

2020.03.19
  • 業界トピックス
  • インド

目次



1. インドの物流市場
2. Eコマース向け物流
 ・Eコマース市場の概要
 ・Eコマースの成長
 ・Eコマース向け物流の概況
 ・Eコマース向け物流のビジネスモデル
 ・Eコマース向け物流のバリューチェーン
3. Eコマースの市場動向と課題
 ・GST (物品・サービス税)導入とFDI (外国直接投資)ポリシーの変更
 ・課題① ラストワンマイル
 ・課題② 代金引換決済 (COD)
 ・課題③ 返品リスク
4. Eコマース向け物流のプレイヤー
 ・主要プレイヤー
 ・Ekart Logistics
 ・Delhivery Private Limited
 ・Ecom Express Private Limited
5. まとめと提言
 

 

1.インドの物流市場

●インドでは物流市場の成長が著しく、国内総生産 (GDP) を押し上げ、雇用創出に寄与するほどになっています

 

  • 2018年の市場規模は1,600億米ドルに達しおよそ2,200万人の雇用を創出しています。
  • 同市場規模は今後年平均成長率 16% で推移し、2020年には2,150億米ドルとなると見込まれており、2025年には5,000億米ドルに達すると予測されています。
  • しかし一方で、物流コスト高という問題が起きており、現に2018年のGDPの14% を物流関連コストが占めています。こうした現状を踏まえ政府は2022年までに物流コストを10% 抑制する計画を進めています。
  • 2017年に物流分野が「インフラストラクチャー」区分のサブセクターとしてのステータスをインド財務省経済局により認定されて以降、市場の成長が加速しています。
  • 融資制度へのアクセス性、外国直接投資および対外商業借入(ECB) の規制緩和、 インドインフラ金融公社 (IIFCL)への融資申込要件の緩和といった制度面が改善されました。
  • 2017-2019年間に物流施設の建設に72億米ドル (FDI) が投入されており、その多くがEコマース物流やマルチブランド (総合小売形態ー複数ブランドの取扱いを認可される) 小売事業の需要によるものです。

 

●業種別でみると、自動車関連(パーツ・完成車)の需要が56%と最も多く、次いでEコマースが占めています。
●Eコマースの市場シェアは2018年の16%から2025年に28% に拡大すると推計されており、今後はEコマースが物流市場をけん引していくことが予想されています。

 

 

●荷物の輸送手段は道路輸送と鉄道輸送が主流です。
●迅速な荷物輸送には物流倉庫の整備が不可欠で、倉庫需要は3PL(物流機能の全体または一部を第三企業に委託する物流形態) 向けが最も多く、次いでEコマースとなっています。

  • 2018年の輸送手段割合は最もコスト高である道路輸送が60%を占めました。他の輸送手段と比較すると、道路 INR 3に対し、鉄道 INR 1.5、海上 INR 1 となっています。 (INR=インドルピー)
  • 道路輸送に集中するのは国内の地理的事情および複数輸送手段を用いるマルチモーダル物流に対応する貨物追跡システムが欠如しているためです。

 

  • 近年のEコマースの成長に伴い倉庫需要が増大しています。業種別割合では、Eコマース関連が2017年の 15% から 2018年には 24% に増加し、その一方でリテールが減少傾向となっています。
  • 4-5 年後にはEコマース関連の倉庫需要が最も高まることが予測されています。

 

 

●道路輸送荷物のうち、重さが2キロ未満の小口荷物が大半を占めています。
●今後、急送配達市場は年平均成長率 15-16% で拡大し 2025年には250億米ドルに達すると見込まれています。

 

  • 急送配達:急送配達需要の高まりを受け、道路輸送が市場シェアのおよそ 55% を占めています。
  • 近年では地場の物流プレイヤー Blue Dart, GATI, TCI Express なども急送配達事業に乗り出しています。
     
  • Eコマースの動向を表す指標の一つに道路輸送による急送配達事業があり、2018年の急送配達市場の収益 28億米ドルのうち、道路輸送によるものが20億米ドルを占めました。
  • この急成長を支える要因としては、Eコマースの成長、中堅中小企業からの高需要、インド当局による規制緩和などが挙げられます。

 

 

2. Eコマース向け物流

Eコマース市場の概要


●Eコマース市場はこの10年間、平均成長率28% の水準で拡大しました。 
●インドEコマースの2強であるFlipkartとAmazonが、市場の63% を独占しています。

 

  • Eコマース市場拡大の結果、2014年に140億米ドルであった市場規模が、2018年には500億米ドル市場へと急成長しました。
  • この背景として飛躍的なモバイル端末の普及、買い物へのアクセス性・小売側の配送サービスの向上などの環境変化が挙げられます。2020年のEコマース市場は640億米ドルに達すると予想されています。
     
  • 2018年の市場シェアは上位プレイヤーのFlipkart とAmazon は、いずれも自社で物流体制を整備しており、各々取扱い荷物の八割以上を自社物流網で取扱っています。
  • 一方、地場プレイヤーのシェアは、Myntra, PayTm Mall, Snapdeal の三社を合計しても 12% となっています(2018)。 これら三社とその他中小事業者はフルフィルメント業務を3PL に委託しています。

※フルフィルメント業務=ECにおいて、受注から配送まで(梱包、発送、 代金回収など)の一連の業務全体のこと
 

 

Eコマースの成長


●スマートフォンの普及とインターネット利用者の飛躍的な増加を背景に、インドのEコマース市場は右肩上がりに成長しています。
●こうしたスマートフォン・インターネット人口の増加を支えているのは、アジア諸国の中でも破格と言われている安価な通信料です。 

 

  • スマートフォン利用者数は2016年の2億5,179万人から2019年には3億7,388万人に急増しました。 
  • 一方、2018年に26% であったスマートフォン普及率は2022年には 36% に増加すると推計されています。
     
  • 2014年に269インドルピー/GB (3.78米ドル/GB)だった通信料は、2019年に18.54インドルピー/GB (0.26米ドル/GB) に下がっています。(値下げ幅は93%)
     

 

Eコマース向け物流の概況


●2018年 Eコマース物流量の約50%を 大都市圏向け荷物が占めています
●2018年のオンライン売上は、トップが家電の48%、次いでアパレルが29%で、この2つのカテゴリで全体の77%を占めています。

  • Eコマース市場の拡大に伴い物流需要は高まっています。 2018年Eコマース向け物流は13.5億米ドルに達しました。
  • Tier I 都市単独での取扱量は一日当たり百万件程度となっています。
  • 今後もインターネットの普及率、国民可処分所得、物流インフラ整備の向上が続くことが期待されており、2022年のTier II ・中小都市の合計シェアが 50% に達すると推計されています。
  • Eコマース荷物の配達件数は、ひと月あたり約5千7百万個 (一日当たり190万個)となっています。(2018年)
     
  • オンラインで製品が売れるかどうかは、消費者行動によるところが大きいと言われています。現在、インドのEコマースは、幅広い製品を取扱う巨大マーケットプレイスの寡占状態となっています。オンラインで売れるのは、いわゆる低関与型製品と言われる家電・アパレルなどが主流です。

 

 

Eコマース向け物流のビジネスモデル


●Eコマース向け物流のビジネスモデルは、以下の3つに大別されます。
●インドの法規制と低運営コストから、「マーケットプレイス型」が主流です。
 

 

 

Eコマース向け物流のバリューチェーン

●インドも他国と同様、ラストマイル問題に直面しており、物流コストの50%がラストマイルで構成されています。
 

 

 

3.Eコマースの市場動向と課題

GST (物品・サービス税)導入とFDI (外国直接投資)ポリシーの変更


●2017年より導入された物品・サービス税 (GST) 制度により各自治体の課す間接税が一本化され、関連する書類手続きの効率化が図られました。
●2018年に FDI 規制が改定された結果、Eコマースのマーケットプレイス型ビジネスが100%外資企業に開放されることになりました。(ただし、一つの出店者の売上がウェブサイトの売上総額の25%を超えてはならない)
●これらの制度改定により、今後も更なる市場の拡大が期待されます。
 

GST(物品・サービス税)導入

  • 2017年7月のGST導入がEコマース物流業界にメリットをもたらします。 
  • GST導入の最大のメリットは、それまで中央政府、州政府、地方政府が各々課してきた間接税が統一されたこと、それに伴う手続書類の効率化にあります。
     
  • インド国内で 5万インドルピー(約670米ドル)以上の物品を州間移動する場合には、電子貨物運送状 (E-Way Bill) の発行が義務づけられました。
  • これにより統合が促進された物流マーケットにおいて中央政府が物品を管理・課税することが可能になります。

 

FDI(外国直接投資)ポリシーの変更

  • この改定を受けて、 Amazonは2019年単年だけで6億5千百万米ドルを子会社に投資し(アマゾンセラーサービス、 アマゾンペイ、アマゾンリテール)、合計投資額は60億米ドルに上ります。
  • FDI規制緩和の背景には、国内物流の効率化を図り、中小企業の成長を促進させたいという政府の狙いがあります。2017年に物流分野がインフラストラクチャーのサブセクターとしてのステータスを認められ、自社物流事業に対するFDI 100% が可能になって以降、Eコマース企業が自社物流網の強化に注力し始めています。

 

課題① ラストワンマイル


●物流コストの削減のみならず、ラストワンマイルをいかに届けるかはインドでも避けては通れない問題です。
●その問題を解決するため、キラナと呼ばれるパパママストア(地元に根付いた家族経営の小売店)における荷物の受取りサービスが開始されています。

ラストマイルの解決が喫緊の課題となる中で、大手Eコマース企業傘下の物流事業者が、キラナを配送機能の一部として活用し始めています。

 

 

  • Tier II 都市とそれ以下の中小都市におけるキラナストアと提携し、配送機能として活用しています。
  • Flipkart は2019年に国内700都市で約27,000店のキラナストアと提携を結びました。
  • Myntra も2019年に国内50都市で約 9,000 店と提携しており、2020年末までに15,000 店に拡張する予定です。
  • Amazon は2020年1月時点で約 20,000 店と提携し、キラナ店主に向けたオンライン通販未経験の顧客対応研修を実施しています。
     

 

 

課題② 代金引換決済 (COD)


●配送料決済について、都市部ではキャッシュレス決済も浸透し始めているものの、未だに現金決済が主流となっています。
●特にTier II 都市とそれ以下の中小都市では、クレジットカードやデビッドカードを信用しない傾向が強いことから、代金引換決済以外は利用されにくいという現状があります。

 

物流業者にとっての代引きのデメリット

  • 物流事業者側にとっては、顧客から代金を回収しその後決済代行会社に対する入金処理といった、配送業務とは別の業務に伴うコストへの影響が発生します。
  • Amazon、 Flipkart によるとプリペイド決済は代金引換に比べて返品率が低いとのことです。
     

企業の取組

  • Eコマース企業の中には代金引換の利用にあたり購入額に上限を設けているところがあり、2019年時点においてSnapdeal は上限を20,000 インドルピー(~280.5米ドル) とし、Amazon およびFlipkart は 50,000インドルピー(~701.2米ドル) としています。
  • さらにはラストマイルの配達スタッフに対して配達先の玄関口や集配センターでのカード決済処理ができるように研修を行う必要があります。
     

 

課題③ 返品リスク


●2018年における商品の返品率は総売上の約3割と推計されており、配送コストより割高な返品コストの抑制が課題となっています。

 

  • 2019年の平均配送コスト単価 65インドルピー(~0.91米ドル) に対して、返品時に発生するコストは平均返品コスト単価 75インドルピー(~ 1.05米ドル) となり、両コスト合計で 2米ドルとなります。これでは低価格商品(15米ドル未満) の場合に採算が取れません。
  • 一方、オンライン通販の平均購入単価は 1,718.5 インドルピー (24米ドル) となっています。したがって配送コストおよびリバースロジスティクス (8%) のコストの抑制が重要な課題となっています。

 

 

4.Eコマース向け物流のプレイヤー

主要プレイヤー


●E-Kart や Amazonといった大手Eコマース企業は、自社で配送会社を保有し独自の物流ネットワークを構築して、市場シェアの約半数を占めています。

売上・取扱量の上位プレイヤー

  • Ekart (Flipkart の子会社)
  • Amazon Logistics (Amazon インドの子会社)
  • Delhivery (Eコマース専門配送会社)
  • Ecom Express (Eコマース専門配送会社)


 

Ekart Logistics


 ■概要

  • サービス開始: 2009年
  • 注力分野: Eコマース企業
  • 取扱量: ひと月あたり1千万個、これはFlipkart の全取扱量の 85% に相当 (2018)
  • 出資者:Flipkart
  • 計画:クーリエ事業の立ち上げ。eQuick Serviceの名称で超地域密着型のドアツードア急送配達サービスのパイロット版を始動。
     

■対象業界・強み

  • 事業領域: 輸送、倉庫業、工場内ロジスティクス、リバースロジスティクス、現金管理
  • 対象業界: Eコマース事業 
  • サービス範囲: PINコード(郵便番号)3,800ヵ所、750万倉庫容積、、 800都市
  • 取引先: Flipkart, Paytm, Shopclues, Myntra, Aditya Birla Group, Madura

 

 

Delhivery Private Limited 


■概要

  • サービス開始: 2011年
  • 注力分野: 国内外におけるB2B および B2C ビジネス
  • 取扱量: ひと月あたり5-6百万個
  • 出資者: Nexus Ventures, Softbank, Tiger Global
  • 計画: バングラデシュやドバイにおけるEコマース市場拡大
     

■対象業界・強み

  • 対象業界: Eコマース企業、自動車関連、製薬、ファッション、エレクトロニクス
  • サービス範囲:  物流センター 2,500ヵ所、 PINコード(郵便番号)18,000ヵ所、 2,500都市(2019年時点)
  • 収容能力: 6百万平方フィート
  • 取引先: Wildcraft, Flipkart, Snapdeal, Urbantouch, Amazon
     

 

Ecom Express Private Limited


■概要

  • サービス開始: 2012年
  • 注力分野: Eコマース企業
  • 取扱量: ひと月あたり 5-6 百万個 (2018年)
  • 出資者: Warburg Pincus
  • 計画: Tier IV 都市における市場シェア拡大
     

■対象業界・強み

  • 事業領域: 急送配達、デジタルサービス、フルフィルメント・リバースロジスティクスサービス
  • 対象業界: Eコマース企業 
  • サービス範囲: PINコード(郵便番号) 25,000ヵ所、 配送所 2,500ヵ所、2,400 都市 (2018年)
  • 取引先: Nykaa, Paytm, Jabong, Myntra, Amazon, Flipkart and Snapdeal
     

 

 

まとめと提言

●インドのEコマース向け物流市場は今後も高い成長が期待されています。
 

急成長を続けるインドのEコマース市場では、その拡大に伴い物流需要も拡大しています。その将来性を示唆する要因を以下に記載します。

  • より透明性のある課税構造: 州をまたぐ物流手続きの簡素化と物流網の統合。
  • オンライン通販の拡大: 近年Eコマース企業に対する信頼性が向上し、幅広い商品にアクセスできる利便性から人気が高まっています。今後3-5年のうちに Tier II 都市とそれ以下の中小都市での需要が急増する見込み。
  • 政府が物流セクターを「インフラストラクチャー」のサブセクターとして認定したことで、事業者による資金調達が容易に。
  • FDI 改定により、マーケットプレイス型と自社物流型事業には100%の外国投資が可能になり、インドの物流セクターにおける外国投資が促進される見込み。

競合がひしめき合うEコマース市場では、大手プレイヤーに先発優位性のメリットがあるものの、物流分野においては市場は断片化しています。したがって市場が抱える課題に対する対処が可能になれば、チャンスをつかむことが可能でしょう。
具体的には:

  • ラストマイル問題の解決となり得る技術や方法。例:代金引換配送に伴う返品率の抑制につながるラストマイル配送に関わるソリューションなど。
  • Tier II & Tier III都市における地域ニーズの把握。
  • コスト削減と物流の効率化を可能にできるリバースロジスティクスの知見。

 

 

 

執筆: Spire Research and Consulting Pte Ltd

   山田コンサルティンググループ株式会社 シンガポール支店

 

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